形式的な入社式、コロナ禍入社の苦悩…ドラマ『悪女』が描く“令和の会社員”が超リアル
30年ぶりのドラマ化でみせるのは?
累計710万部を売り上げる深見じゅんによる人気漫画作品を原作にしている本作は、すでに石田ひかり主演で1992年に日本テレビでドラマ化されている。石田主演の平成版は、旧態依然でしかない、パワハラもなんでもありの男性中心主義のマッチョなオフィスで、働きづらさを強いられる女性社員のやり切れなさが、今なら“完全アウト”な時代性を反映しながら描かれた力作だった。
一方、30年ぶりのドラマ化である今田主演の令和版は、だいぶ時代が変わってきたとは言え、男女均等なんてやっぱり建前だけで、相変わらず旧態依然型の商社を舞台にしつつ、女性社員のプライドがちゃんと際立っている点に、令和の時代性がちゃんと映しこまれている。あるいは、“コロナ年入社組”の等身大の葛藤も色濃く反映されていたり。
令和版女性社員の“底力”
でも、規格外の新入社員・田中がそんな令和の時代性なんて吹き飛ばしてくれる。入社式のあと、新入社員たちが配属先にぞろぞろ移動していくなか、ひとり列を外れて田中が向かったのは、本社旧館にある備品管理課だった。新卒でこんなところに回されたら、そりゃ落胆するだろうと思うのだけれど、風変わりオーラぷんぷんの田中にとって、この配属はむしろチャンス。
薄汚れたオフィスに踏み込んで行っても、やる気全開なのだから、混迷するコロナ社会に突如現れた令和版女性社員の底力かと関心する。
備品管理課は、先輩社員の峰岸雪(江口のりこ)が淡々と説明するように、会社が持て余した社員を置いておく“姥捨て山”なのだった。ドラマ初主演作『SUPER RICH』(2021年、フジテレビ系)で演じたクールなのに温かみのある役柄もよかったけれど、江口のりこは、やっぱりこういう無愛想で毒のあるキャラクターでこそ芸達者ぶりを発揮する。
キャラの強さでは決して負けてはいない、おぼこい爽やかな田中役の今田美桜だって、相当な好演でドラマ全体をぐんぐん引っ張っていく。