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ジブリを支えてきた監督が、宮崎駿にかけられて「愕然とした言葉」

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 スタジオジブリ出身の西村義明氏が立ち上げたスタジオポノックの短編アニメーション映画プロジェクトが話題を呼んでいます。

 その第一弾として『カニーニとカニーノ』(米林宏昌監督)、『サムライエッグ』(百瀬義行監督)、『透明人間』(山下明彦監督)の3編からなる『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』が現在公開中です。

ポノック

「ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-」 © 2018 STUDIO PONOC

『透明人間』の山下監督は、『ハウルの動く城』や『借りぐらしのアリエッティ』の作画監督など、多くのジブリ作品を支えてきた日本が誇るアニメーターです。今作ではオリジナル脚本で監督に挑戦。“存在としての透明人間”を描いて、「お客さんに挑戦状を投げてみた」という山下監督を直撃しました

何かが変わるかもしれない、その一歩を描けたらと思った

――短編アニメーション映画ということで、一見、ファミリー向けに思えますが、本作『透明人間』は、日常を過ごし、会社にも通っているにも関わらず、実は周囲の誰にも見えていないという青年の孤独な闘いを描いていて、ぜひビジネスマンに観てほしい作品です。

山下明彦(以下、山下):そう言っていただけると嬉しいですが、複雑でもあるんです。本当は、こんなの全然分からないという世の中であってほしいなと。これが共感できるとなったら、世の中が病んでるということですから。

――確かにそうかもしれません。しかし実際、響くと思います。

山下:僕は現実の問題を突き付けたいわけではないんです。ただ、辛い思いをしている人にも、周りが気づかなかったり、本人も出せていないだけで、いいところがあるんだよ、大丈夫だよと言いたかったんです。

――最後、救われました。

山下:だったらいいなと思います。決して問題の解決はできないし、長編でも答えは出せないと思います。でもちょっと意識を変えるだけで、何か変わるかもしれない。そんな一歩を描けたらと思いました。本当は笑える娯楽をやりたかったんですよ。

西村プロデューサーからのアドバイス

透明人間

「透明人間」© 2018 STUDIO PONOC

――それがどんな経緯で、今回のようなシリアスなテイストの作品になったのですか?

山下:どんな作品にしようと話し合っているときに、西村(義明)プロデューサーからポンと「透明人間はどうですか?」と投げられたんです。最初に思ったのは、SFにはしないでおこうということ。SFなら僕がやる必要はないので。そこで、象徴としての透明人間だったらできるかなと思ったんです。

 タイトルも本当は『“存在としての”透明人間』なんです。それを思いついたときに、いけるかもしれないと。ただそこからさらに西村プロデューサーから、「透明人間の日常から入ったらどうですか」と言われまして。

――透明人間の日常ですか。

山下:はい。最初はカフカの「変身」のように、朝起きたら透明人間だったという感じで、風刺的なコメディでいこうと思ってたんです。でも日常ということは、すでに主人公は透明人間の状態でいるわけで、いまこうなったんだという驚きが描けない。そこで主人公の内面に入っていくことになり、コメディとは正反対のシリアスな方向に行ったんです。さらに、説明を極力省く作り方にしました。

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