トップ営業マンは「学歴詐称で入社」だった!それでも解雇にならない事情
「彼は有名私立大学を卒業している。しかも、仕事が抜群にできる」。こんな人は確かにいる。だが、実はその大学を卒業していなかったらあなたは何を思うか。会社はどうするべきか。
今回は実際に起きた事例をもとに、学歴詐称について考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で人事の専門家の解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したものであることをあらかじめ断っておきたい。
実例:トップセールスマンは、実は「学歴詐称」?
社員数110人ほどの不動産会社のトップセールスマン・大槻俊樹さん(仮名・27歳)。入社4年目でありながら、契約件数や契約額では部員40人で過去2年間、上位5番以内をキープしている。ひたむきな姿勢で仕事に臨み、上司をはじめ、周囲の社員から人気がある。
実は、男性は「経歴詐称」で入社をした。4年前の中途採用試験で有名私立大学Aを卒業後、新卒で中堅メーカーに就職し、1年で退職と履歴書に記載し、数回の面接を経て内定になった。実際は、A大学に入学すらしていない。最終学歴は、高卒だ。
総務の担当役員や管理職は経理や営業を兼務のため、忙しく、採用試験の対応を十分にはできなかった。もともと、採用の仕事に疎い。入社時に大学の卒業証明書を提出させることもせずに、月日が流れてしまっていた。
昨年暮れ、大槻が卒業した高校の後輩が中途採用試験で入社した。その後輩は、大槻はA大学に入学していないと言い始め、それが社内で噂となる。総務の担当役員が確認すると、大槻はあっさりと認めた。1年近くが経った今、悪びれた様子もなく、元気ハツラツにふるまう。依然、営業成績は群を抜いている。本人は「稼いでいれば、問題ない。何も言われる筋合いはない」といった表情を見せるという。
回答:会社により、対応が異なる
大手士業系コンサルティングファーム・名南経営コンサルティング取締役で、社会保険労務士法人名南経営の代表社員である大津章敬(おおつあきのり)さんに取材を試みた。
大津氏は「卒業していないにも関わらず、『大卒』と履歴書に記載し、入社したのだから“経歴詐称”となる。法律の観点から捉えると問題行為であり、決してすべきではない」と前置きし、こう説明する。
「これまでの労務相談をもとに言えば、新卒採用の場合、ほとんどの会社が卒業見込み証明書を提出させるが、中途採用は特に中小企業では卒業証明書を提出させているのは少ない。今回のように社員数が110人程の場合、その傾向が顕著だ。
経歴詐称ならば、一律に懲戒解雇になるのかと言えばそうとは言えない。それぞれの会社の判断により、対応は異なる。例えば、大手金融機関ならば懲戒解雇にする場合もある。総合職の大半が大卒であり、その社員だけを特別な扱いにできないからだ。行内外に説明がつかないことは避けたい、といった考えが働くともある]