生活保護バッシングが起こる背景。「休んでも大丈夫」な社会を作るには
積極財政を進める米国バイデン大統領
「政府は長年にわたってプライマリーバランス(PB)黒字化を推進してきましたが、6月に発表された『経済財政運営と改革の基本方針2021(仮称)(原案)』において、『骨太方針2018で掲げた財政健全化目標(2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す)を堅持する』と記されていました」
このことに松尾氏は「積極的に財政支出を増やさなければいけない状況下を理解しておらず、いまだに“国の借金”神話の根強さを感じます」と呆れる様子を見せた。
財務省の意向もあるため積極財政に転換することは難しそうだが、そんななかでも松尾氏は「最近は流れが変わりつつあります」と希望を示す。
「アメリカではバイデン大統領が就任して以降、1人当たり約15万円の給付策を実施するなど、大規模な積極財政を見せています。2021年8月にはインフラ整備に約110兆円を充てる法案を上院で可決しており、国土強靭化も含めて、経済成長を図るために大胆に“国の借金”を増やしています。今、議会で共和党が抵抗して債務上限の引き上げをさせず、無用なデフォルト危機をわざと引き起こしていますが……」
財政支出を削減する日本は時代遅れ
「EUでも、各国に財政赤字をGDP比3%以内に抑えること、公的債務を60%以内に抑えること、といった財政規律の順守をコロナ禍では凍結することを決め、6月に開催されたG7では継続的な積極財政を掲げました。『国の借金が~』『財源が~』と言って財政支出を削減することは完全に時代遅れであり、日本でも徐々にですが考え方が改められているように感じます」
実際、経済産業省は6月に「経済産業政策の新機軸~新たな産業政策への挑戦~」という資料を発表。
「そこには『財政政策によって総需要不足を解消し、マイルドなインフレ(高圧経済)を実現することは、民間投資を促します。長期の成長を実現するためにも必要』『コロナ対策やマイルドなインフレを実現するための財政支出の拡大は、財政収支を悪化させるが、超低金利下では、そのコストは小さい』など、積極財政をうかがわせる記述が見られました。
緊縮財政を進めている財務省の官邸支配に対する、経済産業省からのアンチテーゼなのかは不明ですが、政府内でも緊縮財政への見方は変化しています。この経産省の資料では、バイデン政策はじめ世界の積極財政の潮流を詳しく研究しており、この潮流を最大限財界サイドに有利なように利用する意図を持ったプランとして、警戒して今後の動きを注視する必要があると思います。高市さんの政策はこの経産省プランにそったもののようです。総裁選での躍進で今後影響力を強めそうなので、いっそう注意が必要です」