アップル元社員23歳が“フルーツ”で起業した背景「農業のマイナスイメージを払拭したい」
農家育成プログラムもスタート
――今年から農家育成プログラムも始めているとか。
樋泉:若い人が農業をやらない理由に、年中無休で働かなくちゃいけないのに稼げないというイメージがあると思ったので、僕らは果物農家の仕事の見える化に取り組んでいます。実は、果物農家って1年で4か月くらい休みなんですよ。
――え、年間の3分の1はお休み! それって、収穫が年に1度だからこその労働サイクルですね。
樋泉:繁忙期とそうでない時間がハッキリしているので、その働き方をいいなと思ってくれる人もきっと多いと思っていて。また、僕らの販売力がもっと向上して仲介にかかるお金が省けたら、農家へのバックを従来の1.5~2.5倍にできると想定しています。農家の収入のアベレージを上げて金銭面の不安を軽くすることで、農家になりたい若者を増やす。そんな農業の良いサイクルを作りたいですね。
農家育成プログラムの1期生は2人でした。1人は僕らの考えに賛同して埼玉から移住してくれました。彼は最近結婚して、都内勤務の奥さんはリモートで仕事を続けたまま、秋頃に山梨に引っ越してくるそうです。仲間が少しずつ増えてきて、おもしろい展開になってきたなと思っています。
観光農園の活性化をしたい「果物狩りをモダンに」
――農家の嫁は農業をしなければいけない、というイメージも変わってきているんですね。これからのBonchiの展望を聞かせてください。
樋泉:まずは山梨で足元を固めることです。EC販売に関しては、果物の種類をもっと増やしていきたいし、県外にも取引農家を増やしたいと思っています。農家育成プログラムは人生に関わることなので、長期的な目で見て、農家になりたいという人のサポートを続けていきます。
それから、山梨に人を呼びたいですね。山梨は東京から1時間半とアクセスが良くて、自然いっぱいで、キャンプもできる。すごくいい環境なのにあまり知られていない現状があります。
そこで新たな取り組みとして、観光農園を活性化させたいと思っています。今は桃狩りもぶどう狩りも似たようなところしかないのですが、見せ方をモダンにしたら感度の高い若者にも来てもらえるんじゃないかって。お客さんに実際に山梨を訪れてもらって、Bonchiの果物の味を知ってもらうことで、EC事業にも良いサイクルをもたらせるだろうと思っています。
<取材・文・写真/阿形美子>
【樋泉侑弥】
山梨県南アルプス市出身。高等学校卒業後、オーストラリア・シドニーへの留学、アップルジャパンでの勤務を経て、2020年にBonchiを創業。山梨県を拠点に、産直ECサイト「Bonchi」の運営や、若年層の就農支援に携わる