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「鬼滅」効果で利益予想を6割上回った東宝。映画業界で“一人負け”状態なのは

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「鬼滅」効果で利益予想を6割上回る

鬼滅の刃

 2020年の映画業界は空前絶後の大ヒットとなった『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』を抜きには語れません。配給元のアニプレックスは2021年5月に総興行収入が517億円、国内で歴代最高400億円、アメリカ・カナダで48億2000万円に達したと発表しています。

 この映画は作品そのものの質の高さもさることながら、2020年10月という上映されたタイミングも絶妙なものでした。一時的にコロナ感染者数が減少したことで、国内では飲食店の救済措置であるGo To Eatキャンペーンが開始され、外出の自由度が上がった時期でした。日常生活の抑制から解放されて“リベンジ消費”が起こっていたのです。

 これほどのヒットは東宝も予想できませんでした。東宝は当初、コロナ禍の2021年2月期の売上高を前期比38.3%減の1620億円、営業利益を同81.1%減の100億円と予想。そこから2020年10月13日に『今日から俺は!!劇場版』と『コンフィデンスマン JP プリンセス編』のヒットにより、売上高を予想比1.9%増の1650億円、営業利益を同40.0%増の140億円に引き上げました。

 つまり『鬼滅の刃』を公開する直前に売上高を上方修正していたのです。しかし、結果は上方修正した予想を、さらに18.5%上回る1919億4800億円、営業利益は同60.3%増となる224億4700万円で着地しました。当然ながら増収増益効果の大部分は『鬼滅の刃』によるものだったと考えられます

ふるわない洋画に比べ邦画は好調

 2020年国内の洋画の興行収入は、前年比71.5%減の340億900万円と振るわない結果となりました(日本映画製作者連盟調べ)。『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』や『パラサイト 半地下の家族』『テネット』などの話題作はあったものの、コロナ禍で多くの人を動かすほどの作品とはならなかったのです。

 その一方で邦画は底堅く推移しました。2020年の邦画の興行収入は前年比23.2%減となったものの、洋画を大きく上回る1092億7600万円となりました

 これはもちろん、『鬼滅の刃』が365億5000万円で全体の底上げに寄与したことが大きいです。公開からわずか3か月で邦画の興行収入全体の33.4%を稼いだことになります

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