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なぜ現代人は孤独を感じやすい?「私達を洗脳するもの」の正体

学び

「さみしさ」は自分の心がつくりだす

「あの人たちは、楽しそうにやっている」「あの人達は自分より上手くいっている」「あの人のSNSは友だちからの、いいね!が多い」「あの人は私よりフォロワー数が多い」「それに比べてわたしは……」「なんで自分ばっかり○○なんだろう」と、自分を卑下して、みじめに思ったり。

 一方で、「自分は他人よりうまくいっている」「私のSNSは他人よりもフォロワー数が多い」「私の収入は同級生よりずっと多い」「私は他人よりもずっとキレイ、スタイルがいい」と、自分を優位において、自信過剰になったり。

 この一見、相反する、自分を卑下する態度も、自分の優位性をアピールする態度も、じつは同じ、「さみしさ」の裏返しだったりするのです。仏教では、この、他人と自分を比較する悪いエネルギーのことを「慢(まん)」と呼んでいさめます

 テレビを見ても、新聞を見ても、雑誌を見ても、ネットを見ても、あらゆるところに、この「慢」が溢れています。あらゆるメディアで、「慢」が展開されています。○○ナンバーワン、トップ○%、上位○○位、○○ランキング……毎日のように脳に刷り込まれる、こうした類の比較や序列。

 無意識のうちにインプットされる「慢」エネルギーが、知らず知らずのうちに私たちの心を傷つけ、劣等感を植え付け、私たちの心に「さみしさ」や「疎外感」をもたらしているのです。

自分の中でつくりだした妄想に過ぎない

孤独

 平均寿命、平均年収、平均身長、平均体重……そんな情報が、本当に必要でしょうか。もっと大きな問題は、「慢」に洗脳されて、自分で自分に無能とか、不要とか、意味ない、とかいうレッテルを貼ってしまうことです

 それらはすべて、自分の中でつくりだした、妄想に過ぎません。ここに気が付かないと、自分で自分をコミュニティーから追い出し、自分で自分を社会から疎外し、自分で自分の脳に、「さみしさ」の警鐘を鳴らしてしまうことになりかねません。

 人間は、独りで生きていくことはできません。だから、家族をつくり、仲間をつくり、社会をつくったのです。その過程で、仲間を思いやったり、仲間と共感する豊かな脳を発達させたのです。だから、家族や仲間を気づかい、思いやることを忘れてはいけません。

 もちろん、1人の時間は、自分の好きなこと、興味のあることに没頭すればいい。でも、家族や仲間と過ごす時間は、家族や仲間に関心をもち、心を通わせるようにする。そのメリハリをつけず、他人と比較して、自分はダメだと妄想して、「さみしさ」という苦痛を与えているのは、自分自身かもしれないのです。

<TEXT/佛心宗大叢山福厳寺住職 大愚元勝>

佛心宗大叢山福厳寺住職。空手家、セラピスト、社長、作家など複数の顔を持ち「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。僧名は大愚(大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意)。YouTube「大愚和尚の一問一答」はチャンネル登録者数29万人、5400万回再生された超人気番組

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