なぜ出汁の味が東西でちがう?関西と関東「食文化の常識」3選
なぜ関東の玉子焼きは甘く、関西は甘くない?
関東の玉子焼きは甘い。作るときに砂糖を混ぜるからで、仕上げるときは一回で巻き終える「厚焼き玉子」だ。飲食店では「江戸風」と呼ばれることも多い。
対する関西では砂糖は使わない。出汁をきかせた卵を何度もひっくり返す「出汁巻き玉子」となっている。食べるときも醬油をかける関東とは違い、何もかけないことが多い。「出汁巻き定食」という玉子焼きメインの定食もあり、東京でも「京風」として出汁巻きを売る店もあるようだ。
このように味付けが違うので、関西人が関東風を食べたら「妙に甘ったるい」と違和感を訴えることもある。
関東の玉子焼きが甘くなった理由については諸説あり、江戸時代に作られたという説が有力だ。当時の江戸では卵を食べる機会が増えていて、卵料理の専門店もあったといわれている。しかし卵は庶民が気軽に買えるものではなく、砂糖も簡単には入手できない高級食材だった。それでも江戸っ子は見栄と粋を大事にする。高級な卵と砂糖が手に入れば、豪快に使うのが粋だとされた。
江戸前寿司「玉」というネタも
また、江戸っ子の間では甘辛い味が好まれていたので、玉子焼きも甘い味付けにされたとする説もある。
このほかに考えられているのは、寿司との関係だ。江戸から発祥した「江戸前寿司」には玉子焼きをのせた「玉(ぎょく)」というネタがある。卵に魚のすり身や調味料を加えて作るもので、その調理過程で砂糖が使われた。
江戸時代では食品の保存技術が未発達なので、防腐目的でネタに仕込んでいたのである。その甘い味付けの玉が庶民にも広がり、関東の玉子焼きは甘くなったらしい。しかし家庭への普及は戦後からとする説も根強く、正しい理由は不明なままだ。
これに対して、関西では出汁文化の影響で、今のような出汁入り玉子焼きになったという。