病に倒れた“創作カレー”のパイオニアが語る「コロナの時期にできること」
「梅」と「ゴマ」で手応えをつかむ
――「いけるな!」と最初に手ごたえを感じたのはどの料理でしょう。
塚本:梅カレーです。インド料理にライムやマンゴーのミックスピクルスをペースト状にしたものを混ぜるカレーがあるんですね。そのペーストを⾒たときに、これは練り梅で代⽤できるんじゃないのかなっていうのが最初の発想です。
梅の次はゴマですね。その時はたまたまテレビでしゃぶしゃぶを⾷べる番組をやっていたんです。ゴマダレでしゃぶしゃぶを⾷べているのを⾒て、ゴマをペーストにしたのをカレーに⼊れて作れるかな、カシューナッツとかポピーシード(ケシの実)のペーストもあるし、上⼿くいくんじゃないのかなっていう思い付きでしたね。
――へぇー! テレビで見たしゃぶしゃぶのゴマダレがヒントとは面白いですね。
塚本:だから今でも割と料理番組とか旅番組は見るんですよ。新しいカレーを作ろうと思ったら、カレー屋さんに行くよりも別の料理を食べるほうが参考になったりしますよね。
「凄いな」って思えるシェフとめぐり逢う
――塚本さんは色々な引き出しがありますが、キャリアはインド料理一筋になるんでしょうか。
塚本:一筋ではないですね。最初はいわゆる洋食屋さんにいて、その後からインド料理です。まずは新宿にあった北インド料理の「マハラジャ」(閉店)で働いて、次に麹町にある南インド料理の「アジャンタ」に行きました。カレーも北と南でだいぶ違うじゃないですか。初めは馴染めなかったんですけど、ずっとやっていくうちに南のほうが好きになっていきました。
――振り返ってみるとアジャンタ時代に学ばれたことが一番大きいですか。
塚本:大きいですね。今回レシピ本を作りましたけど、ナンコツキーマや山椒ココナッツ、ラムごぼうはアジャンタのキーマ、チキン、マトンをベースにアレンジをしたもの。「和ッサム」はアジャンタのラッサム(南インドの辛くて酸っぱい胡椒スープ)がベースになっているんですよ。
――インド料理店でしか学べないことってどんなことでしょう。
塚本:ボクはインド人と一緒に仕事をしてよかったと思います。インド人以上にスパイスが扱える人はいないですし、なかなか大変ですけど、学べることも多いと思いますよ。いろんな人がいますが、「凄いな」って思えるシェフとめぐり逢うってことが大事というか、それはもう運でしかないんですけど。
当時、アジャンタでも、教えてくれるインド人シェフと教えてくれないインド人シェフがいて、教えてくれないシェフは横でずっと見てると、日によって作り方を変えるんですね。見られたくないと思うんだけど。でも、最終的に同じような味に仕上がって、逆にこういうやり方でもいけるんだって、それもまた勉強になりましたね。