「成長しなくちゃいけない」重圧を描いた漫画が話題に。原作者に聞く、若者に伝えたいこと
会社は「独特の運命共同体」
――創作において影響を受けた漫画作品はありますか?
紀野:コミカルな表現は『ちびまる子ちゃん』や、岡田あーみんの『お父さんは心配性』の影響ですね。あとは『美味しんぼ』『釣りバカ日誌』『編集王』など、会社員が主人公の青年漫画が好きです。会社という独特の運命共同体の中で登場人物がどう動いていくのか、というところに関心があります。
――会社を「独特の運命共同体」と捉えるのは興味深い感覚です。
紀野:同じ会社でも、部署や上司が代わっただけで雰囲気が全然違いますよね。誰と働くかで、環境がすごく左右されます。そこが非常に面白いというか、独特の運命共同体だなと。
――作中には主人公コウキ以外にも、成長教に入信していると思わしき仕事仲間の描写がありますね。
紀野:「成長教」を描く上で主人公が会社員であるということは、すごく重要な要素だと思います。会社で1日8時間は働くわけですから、そこで受け取るメッセージが自分のスタンダードになってしまうんですよね。
成長し続けることに囚われた人を描く
――結局、私たちが強いられている成長という重圧は何なのでしょうか?
紀野:本来、目標に向かって成長することは悪いことではありません。誰かが得するために発せられたメッセージを取捨選択できず、全部受け止めてしまうことが成長教への入信につながるのかもしれません。目標までの過程ではなく、成長そのものが目標になってしまった、成長し続けることに囚われた人を描くというのが「成長教」の1番太い幹かなと考えています。
――最後に「成長しなくてはいけない」というプレッシャーに苦しむ、新社会人、若いビジネスマンに伝えたいことはありますか?
紀野:「成長教」が刺さるという方は、もっと成長したい、周囲の期待に応えられている気がしない、と苦しんでいる真面目な方が多いと思います。「休んでいいよ」「あなたはすでに十分に頑張っているよ」と伝えたいです。
<取材・文/日比生梨香子>