小学生から介護を始めた29歳女性が語る「ヤングケアラー」の現実
学校の課外授業に参加できなかった
しかし真美さんは弟の面倒を見ないといけないため、課外授業に参加できないこともあった。当時、同じ班の同級生には「行けないよ」と言って家で過ごしたという。当然、サークル活動や通塾などは夢のまた夢だ。友人と遊びに行くこともできない。だが真美さんは「そもそも帰宅部で、趣味も家で楽しむものばかりだったから問題なかった」と話す。
「ものすごく勉強をして偏差値の高い大学へ入学したいとか、運動部に入りたいなどの欲求があったら、ツラかったかもしれない。でも私は家で本を読んだり、音楽を聴いたりするのが好きだったし、友達と遊びに行きたいとも思わなかった。だから特に嫌だと思うことはなかった」
真美さんは中高時代を振り返り、「我慢はなかった」と語る。真美さんが本当にそうした望みを抱かなかったのか、それとも本人も気づかないうちに諦めていたのかはわからない。だが、当たり前のことを経験するだけでもハードルが存在したことは確かだ。
就活の面接で言われた一言
真美さんは、世の中の「障がい」という言葉への偏見に違和感を抱いてきたという。
「弟に障がいがあると話して『かわいそう』と言われると、『え、弟に障がいがあるのはかわいそうなことなんですか?』って思う。まるで悪いことのように話していて、障がいのある人を下に見ていないかなって。就活でも1社目の面接で弟のことを話したら『ああそうなんだ、それは悪いこと聞いたね』って言われた。『え? 悪いことなの?』と思いました」
「そういう、社会とズレてるって感覚は小学生のときからありました」と語る真美さん。
一方で、真美さんの母は障がい児教育の勉強会などに積極的に参加していたという。真美さん自身もそこに同行し、知識を得ていた。障がいに対する知識・経験を積み重ねる一方で、社会への違和感も同時に抱かざるを得なかったのではないか。