小学生から介護を始めた29歳女性が語る「ヤングケアラー」の現実
食事、排泄、入浴。癇癪の見守りも
真美さんは、高校を卒業して家を出るまで、弟のケアをしていたという。
「私がやっていたのは、食事の用意、トイレ・入浴の介助、見守り、癇癪(かんしゃく)を起こした時の対応かな。例えば食事だったら、弟は『椅子に座って食べる』という行動しかできない。だから、ごはんを作って食器も全部持っていってあげて、ちゃんと食べ終わるかなって見守るのが役割。食べるのに飽きてくると、食器で遊びだすから、そしたら『はい、ダメダメ』ってやってあげます」
トイレの介助ではおしりを拭いたり、入浴の介助では、ボディタオルで身体を洗ってあげたり頭を洗ってあげたりしたそうだ。
「うまくできないから手伝ってあげるかんじです。基本的に母のほうがずっと弟に付き添っていたけれど、パートをやっていた時期は必然的に、私が昼間の面倒を見ていた。ずっと家事と育児だけをやっていて、母が『いやじゃー! わたしは外に出るんじゃー!』となった時期があって、確か10歳くらいの時だったかな」
「苦行だと思ったことはない」
それから高校生まで、夏休みの日中は見守りのために、真美さんがずっと家にいた。
「弟は同じDVDを何度も見るのね。お気に入りのDVDを見ていれば平和なので、1枚選んでかけてあげる。『ンンンン』って嫌がるような反応をすると、今日はこれじゃないんだなーって変えてみます。DVDを見ていれば落ち着いているし、見守りといっても同じ部屋にいるくらいでOK」
話を聞いていると、真美さんの一家は和やかで落ち着いた家庭だ。父親は単身赴任で家にいなかったというが、同居する祖母も母もきょうだいをともに可愛がっていた。真美さんと弟も良好な関係を築いている。福祉制度とのつながりも担保されており、施設や金銭の公的な補助を受けられている。真美さん本人も「苦行だと思ったことはない」と話す。