日本の借金が1212兆円を突破。国民1人あたり借金983万円でも破綻しないのはなぜか
財政破綻するのは怖いけれど…
モノの値段は需要と供給が一致する点で決まります。よって財政破綻を避けるために税率を引上げて税収で賄うのではなく、国債を発行して賄おうとすると、国債の供給量が増えすぎて価値が暴落する。
結果的に日本円も急落(外貨に対して安くなる)し、輸入価格の上昇などからハイパーインフレになる。このようなロジックで消費増税の引き上げを正当化するのですが、2020年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による景気悪化に対応すべく、日本政府は過去最多の国債を発行しました。
税収を上回る歳出を「ワニの口が開いている」という表現をすることが多いのですが、2020年は国債発行が急増してアゴが外れて口が裂けてしまったことがわかります。それでは、日本円は暴落したのでしょうか? 日本ではハイパーインフレが起きてしまったのでしょうか?
少なくとも、2020年末時点では、4年ぶりの円高水準で1ドル=103円台でしたし、消費者物価指数は前年同月比でマイナスを続けており、ハイパーインフレどころかデフレへの再突入を懸念したほうがいい状態です。
日本をより良いものに導いていくには
将来世代にツケを残してはいけないといって、国が国債を発行してお金を国民にいき渡らすことを控え、公共投資を減らしてきた結果、新型コロナウイルスの感染拡大に襲われた2020年は医療資源が逼迫してコロナで亡くなる人や、景気悪化による経済苦で自殺をした人が増えました。
特に後者では若者や女性が目立っています。将来世代にツケを残してはいけないという政策をとった結果、現役世代が減ってしまい、そもそも将来世代が残らないというチグハグな政策になってはいないでしょうか?
ここでは財務省や日本銀行のデータをもとに事実を書いてきましたが、これを読んでみなさんはどのように感じたでしょうか?
お金や数字に興味を持つことは、日本のことを考えることでもある。私はそう思っています。「いままでとられてきた政策が正しかったのかどうか?」そんふうに1人ひとりが正しいお金の知識と教養を身につけて考えることが、実は日本という国家をより良いものに導いていく一歩となるのかもしれません。
<TEXT/株式会社マネネCEO・経済アナリスト 森永康平>