「俺たちの命の値段は5000円」コロナ病床の清掃業者、悲痛な叫び
「人手不足」と「高齢化」も深刻
今年の4月まで、コロナ病床の清掃に対する特別な手当が藤田さんに出ることはなかった。会社の配慮で、少しばかりの「残業代」がついただけ。4月からは手当がつくようになったが、それもわずかな金額だ。
「何部屋掃除しようと俺たちの給料はそんなに変わらない。こっちは命がけでやっているから、本当はもっともらっていいはずなんだけど。結局、これが俺たちの命の値段ってことなんだよ」
清掃現場では、「人手不足」と「高齢化」も深刻となっている。総務省の調査によれば、ビル・建物清掃員の有効求人倍率は2013年度は1.60倍だったが、2017年度には2.95倍に到達。その後も高い水準で推移しており、人材確保が困難な状況だ。また、2015年の国勢調査では、ビル・建物清掃員の職種において、従業員の37.2 %が65 歳以上の高齢者だった。
藤田さんの現場も年配のスタッフが多いため、コロナ病床の清掃は担当させないようにしているという。現在コロナ病床の清掃を担当しているのは、藤田さんと30代の男性スタッフの2人だけ。
「コロナ禍で仕事の依頼は増えているけど、いかんせん誰もやりたがるような仕事じゃないから、人がずっといない。求人を出して面接までたどり着いても、『うちの会社はコロナ病床の清掃をしている』と伝えると、辞退されてしまう。ここ2か月ぐらいでそういうのが5、6人続いた。やっぱり病院は怖いから」
土日祝日関係なく「出動要請」が…
実際、コロナ病床の清掃はどれくらいの業務負担になっているのだろうか? 患者退室後、3時間の換気をしてから消毒・清掃作業が行われる。コロナ流行当初はひと部屋に約2時間弱を要していたというが、いまはひと部屋30分くらいで作業が終わるそうだ。
「病室の掃除は、特別な技能や知識がいるわけではない。病院サイドがスタッフを何人か抜擢して、コロナ対策チームをつくって清掃することもできると思う。でもそれは誰もやりたがらないでしょう。だから結局、俺たち外注業者に頼んでいる」
現在、藤田さんのコロナ病床の清掃件数は、1週間に2~3部屋。しかし、国内の感染者数が約8000人を記録した今年の1月初旬には、1日に3部屋、1か月で約50部屋を清掃していたという。本来であれば土日祝日は依頼を受けないという病院側との取り決めも、感染者数が急増するにつれて形骸化。土日祝日関係なく「出動要請」が来るようになった。