東京赤羽の小さなお店が、コロナ禍で「無料弁当」を配り続ける理由
家族3人が胸に抱くのは「助け合いの精神」
弥寿子さんの胸にあるのは、「困ったときはお互い様」という助け合いの精神だけだ。そして、夫でオーナーの保憲さん、息子の哲男さんも気持ちを1つにしている。
今年の3月24日、めぐりやのこうした取り組みが夕方のニュース番組で報道されると、大きな反響を呼んだ。そしてそのニュースが、多くの人を突き動かすことになる。
「テレビを見た小学生の女の子とそのお母さんが、『自分たちにも何かできないか』って連絡をくださって。お洋服やジュースを持ってきてくれるようになりました。今では親子で毎日お弁当づくりを手伝いに来てくれて、本当に助かっています」
報道を受けて全国から寄付や支援が
めぐりやの取り組みを応援しようと、店には支援や寄付が毎日のように届くという。近所の魚屋は、卵を10パック寄付してくれた。赤羽駅近くの食堂からは、大きなパックに入った麻婆豆腐を渡されたそうだ。
めぐりやの取り組みに共鳴したのは、赤羽住民だけではない。沖縄の読谷村(よみたんそん)からは毛布が寄付され、遠方の農家からは米が300kgも届いた。
「報道後の反響にはびっくりしています。でも、嬉しいですね。ほかにも、いろいろなものを届けに来てくれる人、送ってくれる人がいます。お弁当を受け取った方は、感謝の手紙やメモ書きを渡してくれます」
めぐりやの取り組みは徐々に、行政も動かし始めている。店を見学した区議会議員が、予算特別委員会で無料弁当のことを例に挙げながら、生活困窮者への住居支援を要請したという。