闇営業、枕営業etc.芸能界の黒いイメージを払拭する「お笑い第七世代」の“強み”
共通するのは“嫌味のない本音”
その後、第七世代の勢いはとどまるところを知らず、『第7キングダム』『お笑いG7サミット』『7G』のように第七世代を意味する言葉を掲げた番組が多数放送されるまでになった。
第七世代の芸人は単に「若い」というだけではなく、新しい価値観を持っているところも評価されている。例えば、チャラ男キャラとして知られるEXITの兼近大樹は、歯に衣着せぬ本音を言うことでも有名だ。
テレビ番組では「ワイプ芸の意味がわからない」「テレビの収録時間は長すぎる」などと、仕事に対する不平不満を堂々と述べたりしたこともあった。普通の芸人が言うと角が立つようなことでも、そのチャラさとかわいげのおかげできつく聞こえない。
「YouTuber」と「芸人」のハイブリッド的な存在であるフワちゃんも、この世代を象徴する逸材である。カラフルで派手な衣装に身を包み、ハイテンションでテレビのスタジオに登場。自撮り棒を持って好き勝手に写真を撮りまくり、目上のタレントにも馴れ馴れしい口調で積極的に絡んでいった。
実は人一倍「空気を読んでいる」
みんなでラスクたべたょ pic.twitter.com/6YOdBYfYhH
— フワちゃん FUWA (@fuwa876) 2021年4月7日
フワちゃんも兼近と並ぶ直言キャラとしても知られていて、ほかの人が言えないような本音を嫌味なくズバッと口にする。
『ダウンタウンなう』(フジテレビ)に出演した際、坂上忍から「フワちゃんってさ、恋とかするの?」と尋ねられた彼女はすかさず「はあ? あんた、この関係性で教えてあげるわけないじゃん」と返した。興味本位で若い女性の恋愛事情を聞こうとする中年男性のセクハラ行為をあぶり出す見事な切り返しだった。
兼近とフワちゃんに共通するのは、持ち前の軽薄なイメージを逆手に取って、旧態依然とした価値観に対する異議申し立てをスマートにやってのけるところだ。その根底にあるのは、彼らのセルフプロデュース能力の高さである。
兼近やフワちゃんは、一見すると自由奔放に振る舞っているように見えるが、実は人一倍空気を読んで、目上の人にも嫌われない言動を心がけている。彼らは単に新しい価値観を持っているだけではなく、それを角を立てずスマートに表現することができる。そこに第七世代の強みがある。
2019年の闇営業騒動、そしてマリエのインスタライブでの告発による枕営業疑惑など、上の世代の芸人にはどこかダークなイメージがつきまとっている。その点、余計な怪しさやいかがわしさのない若手芸人は、これからの時代に求められる存在である。第七世代はすでに一過性のブームを超えて、お笑い界全体を変えるムーブメントとなっているのだ。
<TEXT/お笑い評論家 ラリー遠田>