東大卒「元住友商事マン」がYouTuberに。コロナ禍が生んだ逆転の発想
ケニアのサッカー選手を世界に輸出
――オンラインショップ「世界の花屋」「精油とわたし」も、逆転の発想から生まれたんですか? 商社に加え、直販となるとリスクもありますが。
小林:いえ。これも単純なきっかけからです。うちのスタッフが、「花の写真をインスタに上げていいですか?」と聞いてきたんです。僕はそれまでインスタにあまり興味なかったんですが。アップしたら、意外な反響で。
エンドユーザーと直接つながり、反応や意見を取り入れながら仕入れや販売ができる。もちろん、メリットはそこです。でも、それ以上に良かったのは、ソジャンミ農園はじめ海外の生産者が喜んでくれたことです。
日本人って、なんとなくジャパンブランドがいちばんと思ってるじゃないですか。でも、海外にも真摯にモノづくり、クオリティを追求している生産者はいます。それを日本のユーザーに伝えられたのがうれしいと。
――著書にも、「人と人とのつながりが大切」と書かれてましたね。
小林:はい。これも、ケニアのタクシー運転手との会話がヒントになって、降って湧いた話ですが、今、「ケニアのサッカー選手を世界に輸出する」という計画が進行中です。まだ企業秘密なので、詳しくは話せませんが。
今、僕の中でのブームは木材です。現在、日本の林業は衰退しつつあります。しかし、優秀な日本の木材は、広く用途があるはずです。いわゆるSDGs(エスディージーズ/持続可能な開発目標)という視点ですね。
日本の経営者ってみんなマジメで、年間計画作ったら、1年間、何が何でもそれを成し遂げなきゃいけないと思ってる。でも、時代は変化します。今回のコロナがいい例でしょう。時代に合わせて扱う商材も変化します。
フリーランスに向いている人・向かない人
――そのフレキシブルさも、フリーランスだからできることですか?
小林:大企業病という言葉もあるように、大きな組織は規則の枠で固めないと統制が取れない。固体の分子みたいで、自由には動けません。その点、フリーランスや小さな組織の分子は変化に合わせて柔軟に動けます。
YouTubeでもね、若い人によく質問されるんですよ。「どの業界に就職したらいいですか?」って。でも、業界の勢いなんて時代によって変わる。業界や企業よりも、見極めるべきは確固とした「自分の強み」です。
もちろん、フリーランスに向き不向きはあります。最初に話したように、フリーランスに向くのは、メンタルコントロールできる人。変化をチャンスと捉えられる人。「自分の強み」を機能できる人。僕はそう思います。
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人脈のネットワークと軽快なフットワークも「強み」の小林さん。インタビューを終え、乗り込んだ愛車は高級外車ではなく自転車。軽やかにペダルを踏み、飛ぶように街中へと吸い込まれていきました。
<取材・文/楠 涼>
【小林邦宏】
東京大学卒業後、住友商事株式会社の情報産業部門に入るも、28歳で商社を起業。南米、アフリカ、東欧、中近東など「人が行きたがらない場所」に行って、知られていないニッチな商材を見つけ、取引する「フリーランス商社マン」に。メディア出演やラジオ局のゲストコメンテーター、講演業など、幅広く活躍中
Twitter:@kunikobagp