バイデン政権誕生でも、イラン核問題の解決には困難が山積み
暗殺、経済制裁で揺れ動くイラン
また、その影響もあり、イランは2021年に入って1月4日、中部フォルドゥにある地下施設でのウラン濃縮活動について、濃縮度を20%にまで引き上げると発表した。2015年のイラン核合意で決定された濃縮度の上限は3.67%であり、今回の引き上げは明らかな合意遵守違反となる。
イランはトランプ政権による経済制裁に反発し、2019年以降、4.5%までウラン濃縮度を高めるなどしてきたが、この発表はアメリカやイスラエルを強く刺激するものとなった。
このようなイラン勢力によるアメリカ権益への攻撃、保守強硬派による法案可決、ウラン濃縮度の引き上げという事実によって、核合意への復帰は遠のいたと言えるだろう。
6月のイラン大統領選がポイントに
バイデン大統領自身も前提としてイランが核合意を遵守することを挙げている。そして、新型コロナ対策にまず取り組まなければならない新政権としては、核合意復帰という公約自体が達成されない可能性もある。
このようななか、今後の米イランを中心とする中東情勢を見ていくにあたっては、6月18日にイランで実施される予定の大統領選挙に注目すべきだ。穏健派のロウハニ大統領に代わって、保守強硬派のリーダーが選出されれば、米国やイスラエル、サウジアラビアとの関係が大きく変わることになる。
仮に、以前のマフムード・アフマディネジャド氏のような保守強硬派の政権となれば、バイデン政権との間でも関係がうまく行かないばかりか、イスラエルとサウジアラビアとの緊張がいっそう高まり、中東情勢が不安定になる恐れがある。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>
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