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選挙に行かない日本の若者へ。香港の反政府デモを追った31歳・映画監督が語る

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「雨傘運動」後の喪失感と、未来への希望

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准学士(日本の短大に相当)の学生でキリスト教徒のフォン(当時19歳)。道路での占拠活動ではいつも前線に立っていた

――あの「雨傘運動」を振り返って、監督ご自身が今もっとも感じている気持ちは、無力感だったのか、それとも未来への希望だったのでしょうか?

チャン:社会運動の後というのは、どうしても無力感が残ります。私もそういう心境の中で、この作品の編集をしていました。運動の拠点だったアドミラルティやモンコックを訪れると、道路を埋め尽くしていたテントは消え、元の姿に戻っているわけですが、ふと当時の記憶が蘇ってくることがあります。たしかに喪失感という感情は非常に大きいと思います。

 映画を観た人たちの中には、「ずいぶんと運動に未練があるじゃないか」という声もありました。ただ、編集作業の中、何度もあの時の映像を観返していて思うのは、「この時の精神を保ち続けていきたい」ということでした。

 最近とても興味深い出来事がありました。この映画の上映会を各地で行っていたとき、ある田舎の会場で、かつての学校の先輩が観に来てくれたんです。

――え! その先輩はどんな様子でしたか?

チャン:その先輩は2歳になった子供を連れていたのですが、あの催涙弾が飛んでいるなかで奥様もデモに参加していた。おなかの中にはその子を宿していたそうです。それを思うと、ああ、それだけみんな変わっているんだな、成長しているんだなという印象を強く受けました。

 たしかに香港には、そういった悲観的な空気が漂っていたわけですが、それでもやっぱり希望というものを捨ててはいけない。やはり香港は自分たちが生まれ育った街であり、自分たちが守っていくべきだと思います。

デモは、恋愛と同じようなもの

――日本では2017年に衆議院議員総選挙が行われました。総務省によれば、若年層の投票率は10代が40.49%、20代が33.85%と世代別に見て最も低い数字でした

チャン:おそらく日本の方たちは生まれた時から民主システムがあって、それが当たり前のようになっていることが、むしろ大切に思わない理由かもしれません。私たちもそうですが、何かを失って、初めて大切さに気付くときがあります。この映画を日本で観てもらうことで、私たちが20年以上かけても勝ち取ることができない、民主主義とはどういうものか、考えるきっかけになってもらえたらと思います。

 民主主義はひとつの制度ですが、1人1票の投票権を持っていれば、それで良いというわけではありません。より社会や政治に関心を持って、参加していくということで、初めて民主主義だと思うのです。ですから、そういう民主主義を考えてほしいと思います。

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6月11日におこなわれた立教大学での特別上映には多くの学生が訪れた。右は本作の監修で立教大学法学部政治学科教授の倉田徹氏

――日本公開で若い人や、これから未来を作っていく人に観てほしいという気持ちはありますか?

チャン:そうですね。たしかにこれまで日本で3、4回ほど上映をしましたが、全体的に観客の年齢層は高かったと思います。こういうテーマだからシニア層に興味を持たれやすい、という傾向もあるかもしれません。ただ、先日は立教大学のキャンバスで特別上映され、若い方々にも観ていただくことができたので嬉しかったです。

 やはりたくさんの若い方々に観てほしいと思います。この映画は、映っている彼らとお友達になるような、そして自分が現場で運動を体験できるような、そういう作品だと思っています。

 デモに参加するということは、恋愛と同じようなもので、結果は必ずしも理想的なものではないかもしれませんが、その過程の中でさまざまな成長があると思います。ですから、ぜひ作品を観て彼らと心を交わしながら、香港の社会運動がどういうものか、体験してもらえたら嬉しいです。

<取材・文/小松良介>

【チャン・ジーウン】
1987年、香港生まれ。政策研究の学位取得後、香港バプテスト大学で映画制作を学ぶ。2013年に『香港人不知道的』で監督デビュー。本作『乱世備忘 僕らの雨傘運動』が初めての長編映画となる

【上映情報】
乱世備忘 僕らの雨傘運動』7月14日からポレポレ東中野ほか全国順次公開
※7/14(土)、15(日)、16(月祝)14:50の回、20:30の回上映後にはチャン・ジーウン監督の舞台挨拶あり
配給:太秦

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