選挙に行かない日本の若者へ。香港の反政府デモを追った31歳・映画監督が語る
――「雨傘運動」に参加されたとき、ジーウン監督はお父様と口論になられたそうですね。それはやはり、世代間で感覚の違いがあるということですか?
チャン:世代間の違いは、おそらくどの地域でもあるでしょうが、香港の場合はそれがハッキリと現れていると思います。若い世代は理想を持って世の中を良くしたいとデモに参加していますが、たとえば上の世代の人たちは、1980年代景気の良い時代にがんばってお金を稼いできました。
そして今は社会が安定していることを望んでいます。彼らから見れば、デモばかりして働かない若者たちはけしからん、という感覚になるわけです。これは香港において、わりと多く見られる傾向でしょう。
騒乱による恐怖と葛藤の中で考えた「逃げない」決意
――そんな中で監督は「雨傘運動」に参加して、さまざまな若者たちと出会いました。その中で、特に印象に残っている人、もしくは出来事があれば教えてください。
チャン:やはり一番印象的だったのは、最初に彼らと出会った時ですね。9月27日、撮影を目的に現地を訪れた私は、警察とデモ隊に挟まれるような状況に遭いました。本来なら警察が迫った時に離れるべきだったかもしれませんが、私は同時に、デモの参加者としてこの場所にいる気持ちがあったので、「ここで逃げるわけにはいかない」と考えました。そのうちに、完全に押しやられる形で挟まれてしまい、前線に出てしまったわけです。
さすがに恐怖心を抱きましたが、そういう葛藤の中で、逃げずにここに残ろうと決意した瞬間でもあります。その結果、ある若者たちに出会うことができた。その後、彼らとは戦友のような関係になっていくわけです。彼らが必死で警官隊に訴えている姿勢を見て、私は恐怖と感動を覚えました。
チャン:もうひとつ、レイチェルという16歳の女子中学生に出会ったことも印象的でした。私は当時27歳で、世間からは若いと言われていましたが、デモでは年下の登場人物たちと一緒にいました。
ところが、さらにもっと年下の彼女が現れた。レイチェルはわずか16歳で、たった1人、制服姿でモンコックにやって来たのです。彼女は他の仲間たちとは違ってあまり多くの言葉を発さず、非常におとなしいタイプです。でも、ハッキリとした明確な意思を持っていました。そういう人が現れたことに私は心を動かされました。
――「雨傘運動」で会った若者たちと、その後再会されましたか?
チャン:彼らとはまだ連絡を取り合っています。「WhatsApp」という日本のLINEみたいなアプリで。「よりよい香港のために」という名前のグループを作り、そこで政治などの話題を交わしています。最近は以前ほど交流は多くはありませんが、たまに私が映画を作ったときなどは、一緒に食事をしたりしました。
チャン:あれから、いろいろと変化して、それぞれの道を進んでいます。小学校で英語の先生をしていたり、山登りガイドを目指していたり。先ほど話した16歳のレイチェルは、大学受験に失敗して浪人をしていたのですが、それも辞めてアパレル店で働き、お金を貯めては旅行に行っているそうです。