元サッカー日本代表・鈴木啓太「指導者以外」の道でサッカー界に貢献したい理由
指導者以外の道でサッカー界に貢献したい
「もちろん、指導者も面白そうだとは思うんですよ。中高生を指導して、いい選手を育ててサッカー界に貢献することもできます。ただ、私のやりたいことは他にありますし、何より指導者としていい選手を育てても、それは私とその選手の間で完結してしまいます。
でも、例えばサッカーの指導者たちをとりまく現状の課題を解決して、指導者をもっといい環境で指導させてあげるようにサッカー界を変えられれば、私が直接選手を指導するより、もっと多くのいい選手が育つかもしれませんよね」
こうした事情から指導者の道を選ばなかった鈴木さん。現状の指導環境に感じている課題は、Jリーグのようなトップリーグの指導者たちと、学校でサッカーを教えている指導者たちの、待遇の差が大きすぎる点だという。
「サッカーだけ教えていればいいトップリーグの指導者に対して、学校の先生たちは授業をしながらサッカーを教えなければならない。ほぼ休みなしの状態です。だから、サッカー指導を専門にする人が部活を指導すれば、先生の負担も軽減されますし、それがサッカー選手の新たな雇用先にもなると思うんです」
自分自身で向き合わなければいけない
指導者に限らず、スポーツ選手のセカンドキャリアをめぐる問題は多い。鈴木さんは、スポーツ選手のセカンドキャリアの築き方についてどのように考えているのだろうか。
「現役を引退するにあたって、『じゃあ、次になにをするのか』を考えるのも選択肢のひとつ。ただ、例えば30歳で引退した選手だったら、平均20年間はその競技に打ち込んできている。その状態から引退して、これまで費やしてきた技術や経験をすぐ社会で役立たせるのは難しいです。だから、その間に何かを学ぶのも選択してほしいです」
Jリーグやクラブにも選手のセカンドキャリアを支援する動きはあり、希望する選手には大学の通信教育をあっせんしたり、クラブによってはスポンサー企業への就職といった就職支援を行ってくれたりするという。ただ、こうした支援策をより充実させることが、セカンドキャリアの本質的な問題を解決するにはつながらないと語る。
「選手自身が『次に何を学びたいのか』『次に何をしたいのか』をもう少し考えなければなりません。リーグ側が環境を整えるのもやり方ではありますが、個人的にはリーグがそこまでする必要はないと思いますね」