会社員から仏門に。坊主バー店主「コロナ禍で再確認したもの」
世界で唯一の面白い場所
――そもそも、坊主がバーをやるというのは仏教的にNGではないのでしょうか。
源光:浄土真宗の教えの中に「非僧非俗」(ひそうひぞく)というものがあります。これは今風に簡単に言えば「僧侶に成りきらず・俗人にも成りきらず」という中間者的立場を取るというものです。
――坊主バーは、坊主でも、バーのマスターでもない立場ということですね。
源光:そうですね、もしくはその両方ですね。ただこれは私の話となりますが、坊主バーをしていてこんなことをしていいのかと悩むことも正直ありますよ。悩むこともありますが、そういった悩みや自己矛盾を抱えてでも世俗の日常の中で生きなければ「活きた仏教」を取り戻せないと考えているのです。
「私が一番坊主バーにハマった人間」
――源光さんは、最初はお客さんでしたが、はじめから自分も坊主バーをやりたいという考えを持っていたんでしょうか。
源光:全くそんなことはありません、最初は興味半分くらいの気持ちで坊主バーに行きました(笑)。行ってみたらとんでもなく面白い場所だったんです。ほとんどの全宗教、全宗派の坊さんがお店に集まっていました。その面白さに圧倒されましたね。
もちろん、0号店の坊主バーにいた8割は普通のお客さんです。そうでなくなると、仏教界の同業者か、宗教オタクの集まりになってしまいますし、商売としても上手くいきません。今でもそうですが、「基本はバー」だという原則が重要です。
――お坊さんと一般の人がバーで交流するというのは、良い意味でかなり異質な場所だという印象を受けます。
源光:こんな面白い場所は世界で唯一だと思いましたね。ある意味では、私が一番坊主バーにハマった人間と言えるかもしれません。仏門に入って、自分で坊主バーを始めるくらいですから。