英語で「潔く諦める」をなんと言う?Give Upでは不十分
「潔く負けを認める」などと言う時に使われる「潔い」という概念を、英語でどう表現するでしょうか?
「潔く諦める」をただGive upと言っても、「潔く」のイメージは伝わりません。「負けを認める」という意味を持つConcedeという単語にも、「潔く」のニュアンスはありません。
【第93回】潔さを示す表現
潔い姿は、Sportと言われることがあります。スポーツマンシップという言葉もある通り、スポーツをするものは「潔く負ける」ことが大切とされていることから、イメージが湧くのではないでしょうか? 敗戦後の選手について、He was a good sport.と言えば、敗戦を潔く認めたということです。
また、Gracefulという言葉も使われます。He was graceful in defeat.は「彼は潔く負けを認めた」の意味。また、「取り乱していない」という意味を持つComposedを使うこともあります。He was composed despite the loss.は「敗北にも関わらず、平静さを保っていた」ということ。潔さのひとつと言えるでしょう。
また、Handleという動詞を利用した表現もできます。He handled the loss well.といえば、「負けにうまく対応した」ということ。潔さとは必ずしも同じではないですが、近いニュアンスが生まれます。
He said he knew how to handle the outcome, but he clearly was not prepared for such a landslide loss.であれば、「結果は潔く受け入れると言っていたけど、ここまで大敗するとは思っていなかったみたいだね」という意味です。
「Isagiyosa」という表現もあるが…
「潔く死ぬ」はDie like a manとしている辞書もあります。Like a manのManは「人として」ではなく、「男として」の意味。日本語でもありますが、「男だから」「女だから」という昔の価値観が残っている表現です。
Act like a man.「堂々としなさい」という表現などもありますが、性別に関する固定概念を元にした行動や思考を避けるべきであることを考えると、このような表現を使うことは避けるほうが良いでしょう。
辞書によってはIsagiyosaと書かれているものもあるようです。日本文化研究をしている研究者や、日本に詳しい人であれば別ですが、一般的な英語スピーカーにIsagiyosaといっても、わかってもらえる可能性はゼロに近いでしょう。
「敗者」や「負け者」の意味を持つLoserは、非常にマイナスのイメージを持っています。見下した表現とも言えるでしょう。しかし、Be a good loser.「良き敗者であれ」と言った時には、ニュートラルな表現として使われます。逆にSore loserといえば、負け惜しみばかり言っていたり、負けて期限が悪くなったり、負けを認めなかったりする様子を指します。
<TEXT/同時通訳者 木内裕也>