トランプ→バイデンへの政権移行で「新たな中東リスク」も
来年1月の政権発足に向けて、本格的に人事構想を進めているアメリカ次期大統領のジョー・バイデン氏。トランプ政権からバイデン政権になると、中東情勢は大きく変わるとも言われている。
サウジアラビア、イスラエルなど中東各国もバイデン氏の勝利を祝福するメッセージを発信し、イランも次期政権で米国が国際協調路線の戻ることを願うとの考えを示している。では、具体的にバイデン氏はどのような中東政策を進めていくのだろうか。
イランとの関係性は改善に向かうか
まず、バイデン氏はイラン核合意へ復帰するとみられている。今後どのようにイランとの関係が進展していくかは別として、軍事的緊張が高まることはないはずだ。
トランプ政権はイラン核合意から一方的に離脱するだけでなく、イランへ経済制裁を発動。2020年1月にはイラン革命防衛隊ガーセム・ソレイマーニー司令官が米軍によって殺害されたことから、米-イランの間で一触即発の事態となった。バイデン政権になれば、とりあえずトランプ時代の緊張は緩和され、情勢が大きく変わる可能性が高い。
フランス「AFP通信」などが報じた情報によれば イランのハサン・ロウハニ大統領も、次期政権が国際協調路線に回帰し、懲罰的な経済制裁が解除されれば、「米国が過去に犯した過ち」を償うチャンスとして、対米関係が改善される可能性を示唆した。イラン国内はトランプ政権下の経済制裁で経済が逼迫しており、バイデン政権下で制裁が緩和されることを期待している。
トランプ再選を望んでいたイスラエル
一方、そうなれば面白くないのがイスラエルとサウジアラビアだ。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、バイデン氏を「イスラエルの素晴らしい友人」と呼び、両国間の関係をさらに緊密化させていくことを楽しみにしていると述べたが、本音としてはトランプ大統領の再選を望んでいたことだろう。
バイデン氏がトランプ大統領のような“イスラエル寄り”でないことは分かっており、同首相はバイデン政権がどのようなイスラエル政策を取ってくるかを注視しているものと考えられる。