投資ブームでカモられない、お金とは違う“生きるための投資”の話
既存の投資本が役に立たない理由
ときどき「これからはこんな動画が当たります」みたいなものが書いてあったりするかもしれませんが、それが当たるなら苦労はしないですよね。だいたい、それがわかっているならあなたが動画を作ればいいじゃん、という話です。
というわけで、「あなたが人気YouTuberになるための本」という本が仮にあったら、その内容がいかにしょうもないかという話をしてきまして、実際しょうもないであろう、ということもよくおわかりいただけたと思います。なんで存在しない本の話をわざわざ長々としたかというと、いわゆる世に出回っている投資本って基本的にこんな構造だからです。
こんな投資法でAさんは億万長者になり、Bさんは家賃収入で寝て暮らしています、と書かれても、AさんやBさんの方法論が再現可能なのかわからないですし、もうそんなムーブメントはとっくに過ぎ去っていたりするわけです。そして「こんな投資法」は往々にして、それを実行すると著者とその周囲の人々だけが儲かるものだったりします。「こんな投資法がこれから儲かる」は、誰もコロナ禍の現状を予期できていなかった時点で信用するに値しません。
じゃあ、いっそ投資なんてやめてしまいましょうか。さすがにそれは乱暴ですよね。将来のために何かを積み上げていくというのは大切なことです。では、何に投資すればいいのでしょうか。
まず、よく知らないものに飛びつかないことです。十分な知識がないものは、それが上り調子なのか下り調子なのかの判断ができません。少なくとも、知識を持っている人に比べて確実に動き出しは遅れます。あなたが一生懸命、時には損を出したりしながらも勉強して、つねに利益を叩き出せるような投資家になれるまで元手が持てばいいんですが、そんなにうまくいくわけがないですよね。我々は富豪ではないので、回収できるまで撃ち続けられるほどの資金力はないのです。
そもそも「投資」の定義とは
では、何を元手にしましょうか。要は、お金ではないものを元手に投資をすればいいわけです。利益、価値、資産、これらは別にお金、現金、有価証券などのことだけを指すわけではないのです。もっと手軽に、あなたが持っているものを使って投資はできるのです。
ちょっと、広辞苑で「投資」を引いてみましょう。
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① 利益を得る目的で、事業に資金を投下すること。出資。
② 比喩的に、将来を見込んで金銭を投入すること。「息子に―する」
③ 元本の保全とそれに対する一定の利回りとを目的として貨幣資本を証券(株券および債券)化すること。「―家」
④ 経済学で、一定期間における実物資本の増加分。資本形成。
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④は基本的に学問で使う用語ですのでここでは無視してかまいません。ふつう「投資の話」というと、おおむね③か①の意味だと思います。儲かる株とか証券とか、あるいは事業に出資するとかですね。
②の意味の「投資」は、例文では「息子に投資」となっていますが、これは別に「自分への投資」でも何でもいいですよね。「将来を見込んで」、「がんばってほしい」、「大きく育ってほしい」という願いを込めて投資をするのは、それが企業であろうが他人であろうが自分であろうが同じだからです。つまりこの②は①や③と別の概念ではないのです。
さらに、②には「金銭を投入すること」と書いてありますが、これ、別に金銭でなくてもいいんですよね。自分がされた側で考えるとわかりやすいのですが、たとえば、お金がなくて食うや食わずの生活をしていた時にごはんを食べさせてくれた近所のおばちゃんとか、引越しを手伝ってくれた友達とかに対しては、恩返しとして何かしないといけないな、と感じるのではないでしょうか。