バイデン大統領誕生へ。対中国政策は「オバマ以上、トランプ未満」か
米中関係が改善に向かう可能性は?
バイデン氏は、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に復帰した上での地球温暖化や、世界経済のような多国間協力が必要なイシューにおいては中国とも協力する姿勢を示しており、その部分では米中関係が改善に向かう可能性がある。
そういった中国への関与政策をバイデン氏が進めることになれば、日本では“米国の対中緩和”などとして警戒する声も高まることだろう。しかし、バイデン氏は大統領選前の演説で、中国に対して厳しい態度で臨む姿勢を示している。
新型コロナウイルスへの対応や香港国家安全維持法、台湾問題を巡っては、バイデン氏のスタンスもトランプ大統領とほぼ変わらない。よって、最近、急速に進む日米豪印のクアッド協力、インド太平洋構想などについてはバイデン政権になっても大きな変化はないだろう。
オバマ政権以上、トランプ政権未満か
習近平政権にとって、“アメリカファースト”のトランプ政権が「少数民族問題」に口を挟まなかったことはメリットだったかも知れないが、バイデン氏は人権問題を重視しており、香港国家安全維持法や新疆ウイグルとチベットなどでの人権抑圧に対して圧力を掛けるかも知れない。
いずれにせよ、トランプ大統領とバイデン氏は真反対なビジョンや政策を掲げると思いがちだが、実は共通点も多い。中国への強硬姿勢や米国の非介入主義という部分ではほとんど同じ。
バイデン政権がイラン核合意やパリ協定などに回帰したとしても、アジア太平洋地域の問題については、バイデン政権はこれまでのトランプ政権の4年間の多くを継承することになるだろう。バイデン氏としても、オバマ政権への回帰や反トランプを掲げて当選したとしても、結局は「オバマ政権以上、トランプ政権未満」というレベルで中国に対応していかなければならないのが現実だろう。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>