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非正規は賞与、退職金をもらえないのか。最高裁“真逆の判決”を読み解く

ビジネス

同じ判決結果にならない可能性も

裁判

 以上を踏まえて、今回の事件においては労働契約法の判断要素①~③において正社員と非正規社員の仕事内容に「差があった」とされているわけです。そのため、大阪医科薬科大学事件・メトロコマース事件ともに、賞与・退職金は「支給しなくてよい」という判決になったのです

 ただし、今回のケースではそれぞれの会社で適切な運用がされており、たまたま各要素につき差がありましたが、一般的には仕事の役割が明確になっているほうが少ない印象です。アルバイトや契約社員といってもさまざまな仕事が混在しているほうが多いのではないでしょうか。

 今回は差が認められたものの、どれかひとつの要素が欠けてしまっても、同じ結果になっていない可能性があるのです。事実、メトロコマース事件の判決では、最後に1人の裁判官が契約社員への退職金に対して正社員の4分の1に相当する額すら支払わないのは不合理だといった高等裁判所の判断を認めるべきだという反対意見を述べています

 このような点からも一方的に「不合理ではない」という判決が出たわけではなく、ギリギリのラインの判決だったといえるでしょう

各種手当、休暇の判断の仕方

 一方で、日本郵便事件で問題となった扶養手当や年末年始勤務手当など手当に関しては、賞与や退職金と違って、支給の目的が明確になっているものが多いです

 つまり、手当や休暇に関しては「2.賞与、退職金、各種手当の目的と性質」の要素を厳格に見ていき、それぞれどんな目的、性質で支払われたものなのかを検証したうえで、非正規労働者にあてはまるのかどうかを判断しているわけです。

 例えば、今回の扶養手当であれば「正社員は長く働くことが期待されるし、働いてもらいたい。扶養家族がいるなら福利厚生として補助します」といった目的で支給がされており、それに対して契約社員の雇用の実態をみて、「契約の更新を繰り返している契約社員なら継続的に雇用される見込みはあるよね。扶養手当が長く働くことを期待される人に支払われるなら、長く働く見込みがある契約社員にも支給されなきゃおかしいよね」といった具合に手当の趣旨に沿って長期的な雇用が見込めるのかどうか検証していき、認められたのが今回の判決なのです。

 手当や休暇については今回の判決のように「1.労働契約法第20条の判断要素」の要素をみて仕事の内容に差があったとしても、「2.賞与、退職金、各種手当の目的と性質」に照らして説明がつかないものであれば、今回の判決のように支給するべきだと判断される可能性が高いでしょう。

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