非正規は賞与、退職金をもらえないのか。最高裁“真逆の判決”を読み解く
配置転換やその他の事情に格差はあった?
また、メトロコマース事件においても正社員は契約社員と違って、急に販売員が休んだ際の代替業務を行っていたほか、複数の売店を統括指導していたことなど、こちらも一定の差があったことが確認されています。
②についても大阪医科薬科大学では正社員は出向や配置換えを命じられるが、アルバイトには実質的に配置転換されることはなかったという点が挙げられており、メトロコマース事件においては売店の場所は変わっても仕事内容は変わらなかったなど、いずれも正社員との差があることが挙げられたのです。
配置転換があるということは新しい環境に適応する必要があり、場合によっては転居を伴うことも考えられ、心理的負荷もかかることから待遇差を判断するうえで大きな要素となっているのです。
正社員への登用制度をどう判断したか
最後の③「その他の事情」について確認すると、両事件ともそれぞれに登用制度が設けられていました。試験を受けて合格することでアルバイトから契約社員、契約社員から正社員へ登用される仕組みがあったのです。
登用制度が設けられていてもあるだけで登用された人はいない。もしくは運用はされていても実績として受験者数に対して合格者が極端に少ないなど実質的には登用制度が機能していなかった場合には今回の判決のようにはいかなかったことも考えられます。
しかし、今回のような登用制度があることによって、ずっとアルバイトや契約社員で居続けるなどそれぞれの地位が固定されることはありません。試験を受けて合格することにより正社員になれる可能性があるのです。
自分の努力次第で正社員になれる道があるのであれば一定の格差は許容される部分もあると考えられたようです。