中国・習近平主席の、強気な対米発言を読み解く。武力行使も辞さない構え
香港・マカオとの経済一体化に意欲
10月14日には、香港に近い深セン市の経済特区設立40周年を祝う式典に出席し、中国本土と香港・マカオとの経済一体化を今後加速化させる方針を発表。式典には香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官やマカオの賀一誠(ホー・ヤッシン)行政長官らも参加し、広東省と香港・マカオを合わせた経済圏構想「グレーターベイエリア」の建設に強い意欲を示し、香港・マカオの人々に対して中国への祖国心を高めるよう求めた。
国家安全維持法を巡っても米中の間で火花が散ったが、香港の中国化は避けられなくなり、習近平氏による一体化・同化政策もいっそう進んでいる。
習近平氏は、その前日にも広東省東部にある潮州市に駐屯する海軍陸戦隊基地を訪ね、「戦争への備えに全神経を注ぎ、最大の警戒態勢を維持しろ」「軍は党に対して絶対的な忠誠を堅持する必要がある」などと軍を鼓舞する姿勢を示した。さらに、9月3日に開催された第二次世界大戦終結75周年記念式典の席では「中国復興は共産党政権の運営によってのみ実現される」「共産党の方針や趣旨、歴史をゆがめたり中傷したりする勢力や個人を決して容認しない」などとの姿勢を示した。
けん制する姿勢は就任当初からだが…
習近平氏の米国をけん制する姿勢は就任当初から見られるもので、決して新しいものではない。しかし、トランプ政権との溝が深まるなかで、今年に入っての新型コロナウイルスの感染拡大は「米国との対立はもう避けられない」と決心をさせたようにも映る。
菅義偉首相は10月26日の所信表明演説で、中国に対して「主張すべきことは面と向かって主張する」との姿勢を示したが、習近平氏の最近の発言から鑑みて、「やるべきことはやる」というもう一歩進んだ姿勢が必要だろう。
米大統領選の結果も影響するだろうが、これによって習近平氏の姿勢や発言がトーンダウンするとは考えにくく、日本としても中国に対してもっと厳しく対応する姿勢も必要だろう。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>