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東京→北海道旅行で感じた「Go Toトラベル」支援策の難しさ/常見陽平

ビジネス

主人公の妻が発した「意味のある一言」

半沢直樹

Paravi『半沢直樹』より

 また、気になったセリフもあり、最終回で主人公の妻・花ちゃんが最後の対決へ向かおうとする半沢に対して「だったらもういっそのこと辞めちゃえば?」と問いかける場面があったが、この一言は物語のスパイスであり、視聴者への投げかけのようにもみえた。

 そもそも筆者は「嫌なら辞めろ」論は闇雲に使うべきではなく、例えば、社内での不正取引やハラスメント、過重労働に苦しめられているなど、相応の理由があった場合に使うべきだとは感じている。ただ、それ自体も正解というわけではなく、少なくともドラマ内においては、本部の次長になるのか、はたまた支店長になるのか、出向先で冷や飯を食うのかと翻弄される半沢に対して「嫌なラットレースから降りる」という視点を提示したとみれば、じゅうぶんに意味のある一言だと思えた。

 総じて「正社員が絶対に楽な時代ではない」という社会を浮き彫りにしていたのは、今夏に放送していたドラマ『ハケンの品格』と同様かもしれない。そして原作では、作品内で活躍する半沢をはじめとしたバンカーの一人が「オレたちエリートだったはずだよな」とつぶやくが、このバンカーという銀行員の呼び方も素敵だった。

 一見、偉そうにみえる言葉かもしれないが、銀行で働く人びとの誇りや責任も感じられる。お金が社会の血液であるのも事実で、世の中をうるおそうと奮闘する姿を描いたのはすばらしかった。

<TEXT/働き方評論家 常見陽平>

働き方評論家。千葉商科大学国際教養学部准教授。1974年、北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学院社会学研究科修士課程修了。『社畜上等!――会社で楽しく生きるには』など著書多数
■Twitter:@yoheitsunemi

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