ネット無料の賃貸物件は「回線が切れやすい」説。真偽を専門家に聞いた
コロナで回線品質の悪さが露呈
――しかし、コロナの影響によってテレワークやオンライン授業が普及し、「通信速度が遅すぎてテレワークにならない」「Zoomが落ちてしまって困る」と回線品質をめぐる声も周りからよく聞くようになりました。
池本:回線品質については、コロナの影響で注目されるようになった物件の大きな問題点だといえます。回線自体はコロナ前と変わっていないので、「悪化した」のではなく「みんなが気づいてしまった」のです。実際、管理会社へ「回線が遅い」と多くのクレームが入っていると聞きます。ニュースなどによって不満が取り上げられた影響もあるでしょうね。
また、弊社で実施している「コロナ拡大前と比べて、住宅に求める条件に変化はあったか」という調査でも、「通信環境の良い家に住みたくなった」という回答が第2位にランクインしています。
抜本的に良化させるのは難しい
――通信環境の良い家を求める背景には、どのような心境の変化があったのでしょうか。
池本:「家庭の回線」に対する意識が変わっているためでしょう。従来、家庭回線はウェブブラウジングや動画視聴といった娯楽用でした。しかし、今ではそれがビジネスツールになり、学びにも影響するようになっていますから。
――すると、今後はネット無料物件を敬遠するような流れが生まれるのでしょうか?
池本:そうなると思います。実際、「こんなに通信速度が遅いとは聞いていない。騙された!」と怒る人がそれなりにいます。「ネット無料」という約束は守っているので、当然詐欺ではありませんが。
ただ、入居希望者が「通信速度」を気にするようになれば、オーナーも改善せざるを得ないでしょう。現状でもルーターの切り替えなどをしている話は聞きますが、工事やコスト面の手間から、なかなか回線品質を抜本的に良化させるのは難しいと思います。