手取り10万円台の地方公務員「先輩に相談しても無視され…」と嘆く日々
唯一の贅沢は「ショッピングモール」
そんな岡本さんにとって、たまの楽しみにといえるのが、自宅から車で30分かけて出かけたところにあるショッピングモール。映画館やブティック、飲食街がある。しかし、コロナ禍でお店がどんどん閉店しているという。
「たまに行くと、テレビなどで名前を聞く飲食店やコーヒーチェーンがあるので、そこで300円くらいのコーヒーを買って3時間くつろぐんです。ただ、コロナ下で飲食店のうちの1店が撤退してしまったんです。住民たちにとっては唯一と言っていい憩いの場なので、今後どうなるか不安ですね」
話を聞くと、岡本さんは休日を一人で過ごすことが多いらしい。職場では周りに年上しかいないとのことなので、ある意味、当然かもしれないが、孤立化している理由はそれだけではない。
「実は僕、大学のときは関東の国立大学に行っていたんです。就活は東京の企業を中心に受けたのですが、うまくいかなかった。ただ公務員の勉強もしていたので、地元に戻って試験を受けました。地方を離れたのはわずか4年だけだったのですが……それがいけなかったんです」
職場の先輩に相談しても無視される
大学生活の4年間だけ地元を離れた岡本さんだったが、それを「地元への裏切行為」だと捉える人がは多かったらしい。今どきそんな“都会差別”があるのか? という気もするが、本人はこう語る。
「当然ながら今の職場は初めて働いた場所なのですが、一度でも東京に出た身である私は、あまり良い扱いを受られませんでした。地方特有のルールかもしれませんが、『能力ではなく、地元への貢献度を重視する』といった具合に。任される仕事も雑務ばかりで、先輩に相談しても無視されることが多かったです。
まさか令和の時代になってそんな差別意識があるのかと思いましたが、ネットニュースで、コロナ下で東京都在住の男性が田舎に帰省したら、貼り紙で『都会もんは帰ってくるな』という記事を見て、どこか納得してしまいました。だって、本人や家族と接触しなければ感染リスクも少ないはずですから」
当然、岡本さんが地元に就職したのはコロナ下の時期とは異なるが、その当時から都会の人に対するやっかみのようなものを感じていたそうだ。
「地方住民の根底には都会に対するあこがれがある」と語る、岡本さん。彼が、本当に地元に溶け込めるようになる日が訪れることはあるのだろうか……。
<取材・文/山下恵美 イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>