「菅総理」はトランプ米大統領と“いい関係”を築けるか
バイデン氏が当選しても中国には…
また、安全保障政策に関しては、安保法制懇でも、専門家グループが提言する改革案でも、憲法とのバランスから安倍首相が実現化したもの(集団的自衛権行使の限定容認)は限られる。要は安倍首相は国益を最大限重視し、現実的に行動したといえる。
菅政権になったとしても、今の立場が変わることはないだろう。新型コロナウイルスの感染拡大以降、東シナ海では中国の海洋覇権が活発化し、中国船の大型化、海警局と軍の一体化などが進んだ。
尖閣諸島では日本漁船を追尾したり、日本に尖閣諸島に近づくなと要求するなど、中国の姿勢はより強くなっている。そして、台湾海峡や南シナ海、北朝鮮の核・ミサイルなども考慮すると、日本と米国は多くの面で利害関係が一致し、それが明確である。
また、秋の大統領選挙でバイデン氏が勝利したとしても、現在の日米同盟はこのまま維持されるだろう。バイデン氏はオバマ政権の継承を掲げているが、中国に対しては厳しい姿勢で臨むことを主張しており、米国政治内でも中国へ懸念は超党派的なものがある。
同じ価値観の国々との連携を
菅政権下の日本は、米国だけでなく、中国への態度を硬化させているオーストラリアやインド、またインド太平洋地域に領土を持つ英国やフランスなど、同じ自由・民主主義の価値観を共有する国々とも独自の安全保障網を強化していくべく、広い視野で戦略的に行動していくことが求められる。
菅政権が安倍政権のように長期政権となる可能性は低い。これは菅氏の年齢もあるが、あくまでも安倍政権の継承であり、菅氏も独自色を最大限出そうとしているわけではない。
安倍政権は国益重視のリアリズム外交だったが、菅政権下でもひとまずはそれが維持されることになる。中国の領土拡大路線は今後も続くであろうことから、現在の姿勢を今後も維持していく必要があるだろう。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>