進化した人類は3メートル級!?「スケルトニクス」が夢見る未来の世界
エンターテインメント領域で活躍するスケルトニクス
――現在、スケルトニクスは主にどういった用途で利用されているのでしょうか?
阿嘉:主には、エンターテインメント領域でのレンタル事業です。毎年、数多くの国内外イベントに参加して、みなさんに大いに盛り上がっていただいています。
アメリカやシンガポールなど海外のイベントにも参加することができて、年末にはNHK紅白歌合戦で氷川きよしさんの舞台演出にも使用していただけました。
レンタル事業以外でも、特注製作販売としてハウステンボスの依頼でオリジナルのスケルトニクスを製作したり、2015年にはドバイ首長国連邦から国際会議の展示用として依頼され、製作をしました。
――今後、エンターテインメント領域以外へ展開していくことは考えていますか?
阿嘉:正直なところ、今後、エンターテイメント以外でスケルトニクスや、現在開発しているパワード技術がどういったかたちで展開可能かは、まだわかりません。
――え! そうなのですか……?
阿嘉:会社としては、研究開発は継続的にしているのですが、現段階では、今あるスケルトニクスをさらに改良したものを開発しようとすると、どうしてもアクチュエーター(モーターやエンジンなどの動力)の問題が立ちはだかります。簡単に言えば、人の筋肉ほど性能のいいアクチュエーターがないのです。
――では、今後はエンターテインメント領域の中でさらに展開していかれるのですか?
阿嘉:そうですね。いまのスケルトニクスはまだまだ荒削りというか、むき出しの魅力でやっている部分があるので、もう少しエンターテインメント領域で協力関係を作って成熟してくれば、今とは違ったことはまだまだできるのではないかと考えています。
ものづくりのルーツは高専時代の「ロボコン」出場
――スケルトニクスの着想に至る、阿嘉さんのこれまでのキャリアについて教えて下さい。
阿嘉:僕は沖縄の高専に通っていたのですが、そこで初めて「ロボコン(※)」という大会に出会いました。
高専に入学した当時はバスケ部に入っていたのですが、掛け持ちでロボコンにも取り組みました。もともと、小さい頃からものづくりが好きだったので、自然と入部していた感じです。
※正式名称は「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」。全国の高専学生のその年の競技課題に対しロボットを製作し、競技を通じてその成果を競う。
――阿嘉さんが通っていた高専は以前からロボコン出場校だったのですか?
阿嘉:そんなことないですよ。僕で2期生の新しい学校でしたから。僕らが入学する前、1学年上の先輩が2004年大会に出たのが、母校のロボコン初出場でした。僕らはその翌年に出場しました。
学校ともどのように協力していけばいいかわからない状態で、組織としてのノウハウや技術的な面でもゼロからのスタートでした。
そんななかで出場した2005年大会では、地区大会の初戦で敗退。僕らのチームはスタートゾーンから(ロボットが)出ることができなかったんですよ。圧倒的な力不足を感じましたね。その後、夢中で改良を重ね、2008年には全国大会で優勝することができました。
――ロボコンの経験は今の会社経営に役立つものでしたか?
阿嘉:ロボコンでは特定の目的やゴールに対して最適な手段を選択して、確実に手を打っていくことの繰り返しでした。
これは企業の運営に限らず仕事の基本だと思いますが、それを単純に知識としてだけではなく、実践を伴って学べたというのはすごく感じますね。
――その後、現在のスケルトニクス株式会社を設立するようになった経緯は?
阿嘉:ロボコンが終わったあとも、ものづくりの魅力が忘れられず、当時のロボコンの中心メンバー3人でスケルトニクスの制作を始めました。
スケルトニクスのプロジェクトは2011年春の時点で一旦終わりましたが、その後約1年の空白を経て、やはりもっとすごいロボットを作りたいという思いから「エグゾネクス」という名前で新たなプロジェクトが発進します。
またスケルトニクスに関わるエンターテインメント領域の仕事の引き合いも強くなってきたので、これら2つの背景から、エグゾネクスのプロジェクトのリソース確保、管理の受け皿として法人化を進めることになりました。