シェアハウス「かぼちゃの馬車騒動」そもそもの問題点を徹底解説
みなさんこんにちは、湾岸タワマンブロガー・のらえもんです。今回は、昨年から大きなニュースになっている「かぼちゃの馬車騒動」について解説します。
女性向けのシェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社が経営破綻し、投資した大勢のオーナーたちが1億円を超える借金を背負うことになってしまったという恐ろし~いお話です。
目次
「かぼちゃの馬車騒動」の全貌とは?
不動産を購入して、部屋を貸すと賃料が入ってきます。仮に100平米の建物を建てられるとしましょう。
(1)50平米2LDKなら2部屋
(2)20平米ワンルームなら5部屋
どちらの合計賃料が高いかといえば、20平米ワンルーム5部屋です。50平米の部屋は20平米の2.5倍の賃料を取ることが難しいからです。細かく刻んでも、居住ニーズが有る限り、賃料は面積分ほど下がりません。
じゃあ20平米ワンルームにする? いや、もっと儲けたい人はこう考えます。
「あれ? 20平米ではなく16.6平米の6部屋ならもっと儲かるのでは? いや、14.28平米の7部屋なら?」と、しかし、あまり細かく刻んでしまうと、部屋の中にキッチンとトイレ、バスルームを置く場所がなくなってしまいます。
であれば、個別の部屋にトイレやシャワールームを作らずに、居住者同士で“シェア”してもらえばいい……。そう考えたのが、今回紹介するかぼちゃの馬車のビジネスモデルでした。
投資効率を高めるため、居住者同士が触れ合うリビングなど不要。トイレとシャワールームを2つ用意して、1部屋7平米(!)にすれば、めっちゃ儲かりそうな計画ができあがります。
こうした「シェアハウス(※1)」を大量に作り、「かぼちゃの馬車」と名付けた投資商品を売っていたのが、スマートデイズ(旧スマートライフ)社です。
※1 本来のシェアハウスは真逆の発想です。元々は戸建てなどの広い家を何人かでお金を出し合って分けて使うというものです。
高学歴・高収入サラリーマンがダマされたワケ
さて、こうして作ったかぼちゃの馬車を誰に売っていたのかといえば、主に30~50代のサラリーマンに販売していました。
彼ら多くに共通するのは、高収入でも貯蓄があまりないこと。そして不労所得がほしいから、投資をしたいという点です。高収入属性があれば高額の投資用ローンを借りることは可能です。頭金は0円、土地と建物はスルガ銀行が用意したローンを組んで購入しました。
かぼちゃの馬車は、前回の記事で紹介した「中古ワンルームマンションの元手なし不動産投資話」とは以下の2点が違います。
(1)スマートデイズ社がすべての部屋を一括借上げ(=サブリース)して、8%の高利回りを約束していたこと
(2)入居者ターゲットを“お金がない若い上京女性”に定め、職業を斡旋してそのフィーで家賃を回収する「社会貢献型の新しいビジネスモデル(※2)」を強調したこと
都内の新築アパート、しかも賃料が保証されるサブリース契約で8%も利回りが出る物件なんて不可能です。かぼちゃの馬車がいかに収益効率の高い建物で、新発想のビジネスだったかがわかります。
そして、都内各地で不動産投資セミナーを開き、都内にかぼちゃの馬車を次々と建てました。その数なんと800棟1万室。700人のオーナーがいたと聞きますが、そのほとんどがフルローンで、毎月100万円前後のローンを支払う計算でした。
でも大丈夫! 建てた後は、スマートデイズ社が全部借りてくれて、サブリース料120万円払ってくれるから! 毎月のキャッシュフローは十分回る計算です。しかし……。
※2『「家賃0円・空室有」でも儲かる不動産投資――脱・不動産事業の発想から生まれた新ビジネスモデル』(大地則幸著・ダイヤモンド社)より
運営会社の真の収益モデルとは……?
しかし、入居率が高いというセミナーでの触れ込みはまったくの嘘でした。
職業斡旋のビジネスもほとんど鳴かず飛ばず。そもそも、他のシェアハウスと違い居住性が劣り、さらに駅から遠い物件が多いため、建てても建てても入居者がつないのです。
あれ? 賃料収入がないならサブリース料はどこから支払われるのでしょうか? 実は、スマートデイズ社の真の収益モデルは「高属性のサラリーマンにローンを組ませて著しく割高な建物を買わせる」ことにあったのです。
(1)5000万円以下で建てられるシェアハウスを1億円で建てさせて、
(2)貯金はないけど収入はある、高属性サラリーマンの通帳を貯金があるように偽造して、
(3)偽造した証拠を元にスルガ銀行で借りさせて、
(4)建設会社からキックバックをもらう。
こうすれば、新しいかぼちゃの馬車ができるたびに、何千万円も収入が入ってくきますから、しばらくはサブリース料を払い続けられます。しかし、こうした自転車操業は長くは続きません。
上記ビジネスモデルをもう一度見てください。一番キーになるのは資金の出し手です。肝心のスルガ銀行が突然ルールを変更し、新規のかぼちゃの馬車に貸さなくなった瞬間、自転車の回転は急停止します。
スルガのルール変更からたった2か月。スマートデイズ社はサブリース料を払えなくなったと説明し、その後破綻します。
「かぼちゃの馬車」オーナーに残されたものは……
かぼちゃの馬車オーナーに残されたのは、金利3.5~4.5%、1億円の借金と、5000万円程度しか価値のない入居者のいない建物でした。
入居者を確認すると誰もいないので、毎月100万円のローン支払いだけが残ります。高収入サラリーマン達が一斉に破産の危機に瀕したこの事件は今も数多くのニュースになっています。
類似の他事件と違うのは「被害者は手持ちのお金を取られた」のではなく「被害者はみな、1億円の借金を負わされてしまった」という点です。住宅ローンを抱えている方は、家も手放さざるを得ないでしょう。
「かぼちゃの馬車騒動」から学ぶべき教訓とは?
この事件、悪いのは誰でしょう……? 自転車操業を隠していたシェアハウス業者はもちろんですが、ビジネスモデルを支え、行員らが融資に必要な書類を改ざんしていた疑いもある銀行は? 不勉強のまま欲に転んだ投資家は?
この記事を読んだ20代若手サラリーマン諸君は、ここから一つの教訓を学ぶべきです。前回も述べましたが、「資産を持っていない人にうまい話は絶対に来ない」という鉄則です。
自らの無知や不勉強を叱ってくれる人は、社会人になったらいません。でも、不勉強ゆえに自分が著しく不利な契約を結んでも、助けてもらえることは稀です。
契約をする前に、「本当にこの“うまい話”裏がないのか?」「自分はダマされているのではないか?」と確認しましょう。かぼちゃの馬車を購入し、被害者となったオーナーの多くは、学歴も高く収入も多い自信に満ちたエリートだったのです。
<TEXT/のらえもん>