「キツい会社=悪いブラック企業」ではない。人事のプロが断言する訳
バッドブラック企業には「搾取の論理」
――どういうことですか?
大橋:例えば新卒社員が、ある仕事を上司から依頼されたとしましょう。上司は「成果さえ出せればそれでいい。労働時間は定時内で、もちろんテレワークもOK。ただし、俺も忙しいからやり方は教えられない、君のほうで何とかしてくれ。では締め切り厳守でよろしく!」という企業です。
こうした企業はコンプライアンスを「形式的に」遵守していますが、実際は社員を育てるつもりはなく、使い捨てのコマとしか見ていないと言えるのではないでしょうか。
もちろん経験豊富でスキルの高い人なら、このような仕事の振り方でも対応できますが、発展途上の若いビジネスマンに、ろくな教育もせず成果だけを求めるのは育成する気がない証拠です。そんな企業では若手に伸びしろがあっても育ちようがありません。
つまりこのような企業はホワイト企業を騙るバッドブラック企業で、そこには無理難題を押し付けてできないなら辞めてくれという「搾取の論理」があるのみです。
グッドブラック企業は「育成の論理」がある
――なるほど。確かにそういう見方もできますね。
大橋:一方、グッドブラック企業には「育成の論理」がしっかり根付いています。求められる成果のハードルは高いですが、社員研修やOJTが充実しているのはもちろんのこと、職場で社員同士のコミュニケーションを促すための工夫がなされています。
例えば、社内勉強会。昔であれば、定時外で様々な勉強会が行われていた企業でも最近ではこういった取り組みは見かけなくなっています。
ところが、「育成の論理」が働いているグッドブラック企業では、強制なしの自由参加で社員が主導して実施しているようなところがあります。こういった機会があることで、スキルアップしていくことはもちろんですが、他部署や役職をまたいだ縦横のコミュニケーションが浸透していきます。
そうやって社員同士にお互いを知る場があれば、人材育成にも良い影響を与えるでしょうし、仲良くなって勉強会後に飲み会が開かれれば親睦も深まります。私自身、かつてグッドブラック企業に勤めていた経験から言わせてもらうと、実は社会人として生き抜くヒントというのは、案外こうした就労時間外に得ることが多いものです(笑)。