中東イラクで「イスラム国」が再び活発化。コロナの陰でテロが急増
支持する武装勢力が各地に点在
イラクでは2020年5月に新政権が発足したが、依然として政権基盤は脆弱で、今すぐに去年秋のような反政府デモが激化しても不思議ではない。
そして、シーア派とスンニ派、クルドと、宗派・民族の融合が難しいイラクでは、イスラム国がスンニ派住民の不満を利用し、勢力を盛り返すことは十分に考えられる。しかし、それはイラクだけの問題ではなく、国際安全保障にとって大きな問題なのだ。
イスラム国は、他のテロ組織と違い、グローバルに拡散する一種のネットワークとなっている。イスラム国を支持する武装勢力は、フィリピン、インドネシア、バングラデシュ、インド、パキスタン、モルディブ、イエメン、エジプト、リビア、マリ、ブルキナファソ、ナイジェリア、ソマリア、モザンビークなど各地に点在するのだ。
もちろん組織によって組織的、財政的な規模は違うが、今もイスラム国を強く支持している。
イラクとシリアの動向次第では…
そして、現在もその思想的な中枢はイラクやシリアにある。要は、イラクとシリアでイスラム国が再び活発化すれば、各地域のイスラム国支持組織が呼吸を合わせるかのように勢いづく危険性があるのだ。すでにそれぞれの組織での活動も行なわれているが、中枢の再生は、新たな正当性やモチベーションを各組織に与える恐れがある。
イスラム国のテロは、欧米諸国ほど日本を意識したものではなく、日本人を狙う事件は限られている。しかし、アジアや中東、アフリカなどを訪問、駐在した時には、必然的に欧米人など外国人が多く集まる場所を使うことになる。
そうなると、狙われなくても巻き込まれる可能性は十分にある。海外へ渡航をする際は、常にテロ情報など海外治安情報を確認することが重要だ。
<TEXT/イエール佐藤>
12