マスクは「1人1箱まで」…黙って2箱買ったら詐欺罪になるのか?
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、私たちの身の回りでもさまざまなトラブルが起きています。マスクはどのお店でも品薄状態。そして、トイレットペーパーにいたっては在庫が豊富にあるにもかかわらず、SNSで流れたデマのせいであっという間に入手困難になりました。
このように新型コロナウイルスに関連した「法的にどのように解釈されるのか気になる」話題を弁護士・公認会計士の資格を持つ後藤亜由夢氏にまとめてぶつけてみました。
業務を妨害したとは言い切れない
まずSNSでデマを拡散した場合について聞いてみました。後藤氏曰く、デマとわかった上でその情報をSNSで流した場合、
① 特定の個人の名誉を棄損した場合は名誉棄損罪
② 特定の個人の経済的信用を損ねた場合は信用棄損罪
③ 他人の業務を妨害した場合は偽計業務妨害罪
上記のに3つの罪状にあてはまると、処罰の対象になるといいます。
「今回のトイレットペーパーやティッシュが品薄になるというデマをSNSで流した場合、①個人の名誉や②経済的信用を棄損したとはいえず、名誉棄損罪と信用棄損罪にはあたりません。
そのデマにより、トイレットペーパーやティッシュが店頭からなくなった結果、製紙メーカーやドラッグストアの業務に混乱が生じたときは、製紙メーカーやドラッグストアに対する③偽計業務妨害罪が成立する余地があります。
しかし製紙メーカーやドラッグストアに利益が出ている可能性もあり、単に業務を妨害したとは言い切れないため、たとえ偽計業務妨害罪が成立してもやはり処罰されることはないと思われます」(後藤氏、以下同)
マスク購入後にまた並ぶのは詐欺罪になるかも
品薄状態が続いているマスク。店頭では「1人1箱」というルールが定められているのにもかかわらず、1度買ってまた並びなおして買う人もいるようです。
このケースでは並びなおしてマスクを2箱以上買っていることがわかった場合、店側は客から詐欺にあった、または店側に錯誤(勘違い)があったとして、売買契約の取消または無効として、民事上の返還請求を行うことができるそうです。
「刑事上の責任として、(厳密に言えば)詐欺罪に該当すると言えます。詐欺罪は『人を欺いて財物を交付させた』と言える必要があり、今回で言えば、すでにマスクを購入済みであることを隠して2箱以上購入した客の行為が“欺く行為”になると考えられます。つまり、その客は店を欺いてマスクという“財物”を交付させているわけですから」
実際、複数の人で「並びなおし」を繰り返してマスクを集める”転売ヤー”の手口も報道されている。