韓国『パラサイト』だけじゃない。“悲惨な格差社会”を描いた注目の4作
アカデミー賞作品賞、カンヌ国際映画祭最高賞などを獲得し、世界中で大フィーバーを巻き起こしている韓国映画、『パラサイト 半地下の家族』。
劇中に登場したインスタント麺が人気となり、画面に映っていたスペイン製のポテトチップスまでが大幅に売り上げを伸ばすなど、まだまだその熱狂が続いている。そんな勢いのある『パラサイト 半地下の家族』の、大きなテーマとなっていたのが、韓国の格差社会の現状だ。
映画のなかで、社会問題として極端な貧富の差があるという現状を描くのは、1940~50年代にイタリアで起こった、社会の現実を描く“ネオレアリズモ”運動を代表に、古くから行われてきた。だが、そのような“格差映画”の存在感は、近年になって非常に大きくなってきている。ここでは、そんな最近の世界の“格差映画”を紹介しながら、注目されている理由を考えていきたい。
『風をつかまえた少年』(イギリス/マラウイ製作)
世界でも最貧国のひとつだとされる、アフリカのマラウイを舞台とする、ノンフィクションの書籍を原作とした作品。サンダンス映画祭、ベルリン国際映画祭などで注目された。
長い間雨が降らないため作物が育たず、主人公の少年ウィリアムが住む村は困窮する。当時の大統領ムルジが村を訪れて大規模な集会が行われた際、村の族長が衆目の中で食料などの支援を要請すると、族長は裏でリンチに遭い、村は見捨てられる。
私財を溜め込む大統領は、票集めによる権力の維持にしか興味がなく、貧しい村の支援に税金を投入するなどという発想はなかったのだ。そんな事態に、村の人々の心は荒れていく。
食料が略奪され、一家が餓死の危機に陥るなか、ウィリアムは学費が払えず追い出されてしまった学校の図書館に密かに通い、廃品などから独学で風車を製作し、水を畑に引くことに成功する。
感動的な物語だが、そもそも政府の援助があり、教育が無償化されていれば、ウィリアムは飢えずに、本来の勉強を不自由なくできていたはず。政府の無関心や利己主義が、貧困を深刻にしているのだ。