大相撲・徳勝龍、記録尽くめの初優勝…“幕尻力士”が起こした大番狂わせ
平成以降、「番狂わせ」と呼ばれた初優勝
今場所を制した徳勝龍が平成以降の32人目の初優勝力士となった。今場所同様に、初優勝は番狂わせと呼ばれる展開となる場合も少なくない。
徳勝龍以前に、番付最下位からの優勝を果たしているのは2000年(平成13年)3月場所での貴闘力。東前頭14枚目に位置しながら、終盤には2横綱との対戦も組まれた中での史上初めての幕尻での初優勝だった。
また、平成に入って間もない1991年(平成3年)には年間6場所それぞれ優勝者が代わり、3人が初優勝を果たしている。
その中で名古屋場所での琴富士、翌秋場所での琴錦の両力士による2場所連続での平幕優勝は昭和初期に15日制となって以降、現在まで唯一のケースとなっている。
大関昇進への期待がかかる朝乃山
1992年(平成4年)初場所での貴花田(のち貴ノ花、貴乃花)の初優勝も番狂わせの内のひとつといえるだろう。ライバル・曙と争い手にした19歳5か月での賜杯は最年少記録として現在までも破られていない。
前年には横綱・千代の富士にも勝利しており、この初優勝から新たなスターへの階段を駆け上がっていった。
2019年5月の夏場所を制した朝乃山は58年ぶりとなる三役未経験力士の初優勝だった。西前頭8枚目で、鶴竜、豪栄道の横綱・大関陣との優勝争いは未だ記憶に新しい。昨年は年間を通して最多勝も記録し、今場所は新関脇で11勝を挙げている。いよいよ来場所は大関獲りの場所となる。
初優勝を成し遂げた徳勝龍と共に、春場所の主役になり得る力士の一人だ。そして角界を引っ張る力士として今後、数多くの名勝負を見せてくれることを期待したい。
<TEXT/佐藤文孝>