スターバックスが「無料Wi-Fi」を始めた理由。元CEOが語る経営論
スターバックスが「無料Wi-Fi」を始めた理由
岩田:また、店舗での無料Wi-Fiを始め、一人席や電源コンセントも増やしました。当時はまだ珍しかったこともあって、「そんなことしてますます回転率悪くなり業績が落ちるのではないか?」というメディアからの批判もありました。
――くつろげる椅子があって、インターネット回線も無料で使える。しかも、電源もあるとなると当然、お客様は長居をしますよね……?
岩田:スターバックスのミッションは「人々に潤いを与えること」なので、ゆったりくつろいでもらえることこそスターバックスの存在理由(=ミッション)なのです。
しかし実際スターバックスのお客様は「テイクアウト」も多い。テイクアウトできない喫茶店のような業態の場合は、「席数×回転率×単価」で売上が決まってしまう。だから1時間経ったら、「ごゆっくりどうぞ」と言いながら水をバーンッと置きにいく必要がある(笑)。
でも、スターバックスの場合は一人が8時間居座ったとしても、残りの7人がテイクアウトしてくれれば売り上げ的には同じです。実際、お客さんの4割ぐらいはテイクアウトの方が占めています。
「何のために働くのか?」を明確に
――スタバが全国各地にどんどん出店することも、ミッションにかなっていることですか?
岩田:私は「より多くのお客様に、より深い感動」を味わっていただければ、スターバックスのミッションがより達成されるのではないかと考えました。
ですからスターバックスの出店を待っているお客さんがいるなら、できるだけその要望に応えようと思いました。そして全県出店することを目標としました。ただ、お店の数だけ増やしても、サービスの質が追いつかないと、感動にはつながらない。ですからWi-Fiやコンセントを導入したのです。
スターバックスの店舗のパートナーの皆さんが、あんなに生き生き楽しそうに働けるのは、ひとりひとりがスターバックスのミッションを理解し、共鳴し、実行したいと思ってくれているからだと思います。
<取材・文/島影真奈美 撮影/詠祐真>