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受験競争の果てに…東大卒女子が苦しむ“逆学歴コンプレックス”

学び

 牧野さんの職場での「東大卒」に対する固定観念は、想像以上に強いものでした。

「『東大の人って、やっぱり雑用はくだらないからやりたくないと思ってるんでしょ?(笑)』と嫌味をぶつけられたこともあります」

「どうして東大卒なのにこんな点数なんだ!」

 牧野さんにとって「東大卒」が重荷となったのは、通常業務だけではありません。会社が人事採用の一環として知能指数を判定する試験を導入した際、若手社員はテスト代わりにその試験を受けさせられたそう。

 その試験で“二流大卒”の他の社員よりも低い点数を叩き出してしまった牧野さんは、社長から直々に呼び出され、「どうして東大卒なのにこんな点数なんだ!」と懇々と説教されたと言います。

「『東大卒なのに採用試験の点数が低い』ということは、実務と何か関係があるのでしょうか? こんなふうに、何をしても色眼鏡で見られます。在学中から覚悟はしていましたが、ここまでとは……」と、牧野さんは嘆きます。

「私がいわゆる『デキる女』でなかったのも災いしていると思うのですが、今では初対面の相手に学歴を話すのが怖くて、聞かれてもはぐらかしています」

まさに“逆学歴コンプレックス”の悩み

ショック ビジネスマン

 現在は出版社を退職し、フリーライターとして活動している牧野さんですが、ここでも「東大卒」の弊害が立ちはだかりました。

「ライターは特に人脈がものをいう仕事。ですが、東大在学中の知り合いはどうしても官僚や裁判官、弁護士、研究者といった“真面目でおカタイ職業”の人ばかりになってしまいます。

 その点では、早慶やMARCHでメディア論を専門的に学び、多様な人脈を築いてきた人材のほうが強いと感じていますね」

「東大卒」という強力なレッテルに苦しめられる牧野さんの姿は、まさに“逆学歴コンプレックス”といえるでしょう。

 よく、東大卒の男女は「どこ卒?」と聞かれて「一応、東大です」と答えると言われますが、この「一応、東大です」も逆学歴コンプレックスが生んだものかもしれません。

「いっそのこと他の大学に入るか、東大卒の多い職場に勤めていればよかったな……なんて考えがちらつくこともあります。でも、今さら言ってもしょうがない。このレッテルと生きていくしかないですね」

 そう呟く牧野さんが印象的でした。

<取材・文/小泉ちはる イラスト/三澤祐子>

ライター/漫画家。キャリア、ビジネス系の記事から映画のコラムまで幅広く手がけています

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