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くら寿司が大幅減益。客離れからの復活に期待できる強みとは?

ビジネス

売上減少への対抗策が読み取れない

 この原因について、決算短信内では「原材料価格の上昇や人材不足に伴う人件費の上昇」を理由にしているものの、対策は明確に書かれていません。強いて言うならば「新規出店を継続する」くらいしか読み取れませんでした(本連載で、以前書いたCoCo壱番屋の記事で示したプレスリリース・IR資料の明瞭さとは対照的です)。

 決算関連の数字を読むだけだと率直に言って「大丈夫か? この会社……」と感じてしまいますが、くら寿司の魅力の源泉は現場と、それを支える仕組み群にあります。

 この魅力の源を後に続く「社長のキャラクター」「社風」の項目で解き明かしていきます。

2)社長のキャラ:たたき上げのオーナー社長

 現在の社長は田中邦彦氏です。略歴は下記の通りです。すし業界の非効率さに着目して、自ら起業した会社で代表取締役を続けていることから「オーナー社長」と表現して差し支えないと思います。

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1951年 岡山県総社市に生まれる
1977年 タマイノ酢を退社、その後個人寿司店を開業
1990年 株式会社くら寿司を設立
1995年 株式会社くらコーポレーションを設立
2001年 ナスダック・ジャパンに上場
2004年 東京証券取引所2部に上場
2005年 東京証券取引所1部へ指定替え
2019年 株式会社くら寿司に社名変更
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 また、株式の状況は下記の通りです。田中邦彦氏は第4位の大株主であり、持ち株比率は4.96%です。

大株主の状況

大株主の状況(平成30年10月期 年次報告書より引用)

 大株主一覧で特徴的なのは「株式会社ウォルナットコーポレーション」の存在と、田中姓の大株主が他に2名いる(田中信氏・田中節子氏)ことの2点です。この点について簡単に触れておきましょう。

 まず、「株式会社ウォルナットコーポレーション」は創業家の資産管理会社です(参照:プレスリリース「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ」)。そのため、この会社の持ち株比率は、「創業家の実質持ち分」と考えて差し支えありません。

 また、田中信氏は田中邦彦氏のご子息、田中節子氏は田中邦彦氏の奥様です。彼らと、田中邦彦氏の持ち分・ウォルナットコーポレーションの持ち分を合算すると、創業家関連の持ち株比率は「47.24%」に上り、非常に安定した株主構成と言えます。

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