ブラック企業だったサイボウズが「働き方改革」を実現できた舞台裏
政府が推進する働き方改革。多様なワークスタイルを選択できる社会実現のために、副業解禁や長時間労働の是正などを行う企業が増えてきている。
そんな中、まさに働き方改革を地で行く企業がサイボウズ株式会社だ。仕事の業務効率化を図るツール「グループウェア」を手掛けるとともに、「100人いたら100通りの働き方」という考えのもと、多様な働き方を実践するための制度をいち早く取り入れてきた。
11月7日には同社取締役副社長の山田理氏が著書『最軽量のマネジメント』(サイボウズ式ブックス)を出版。
同書では、かつてブラック企業だった頃から変貌を遂げた同社の人事制度やマネジメントについて記されている。働き方に多様な価値観が求められるようになってきた今、企業のマネジャーは何を意識して、どのような行動をすれば良いのか、山田氏に話を伺った。
ブラック企業から変貌を遂げた理由
まず、サイボウズが制度として掲げる「100人100通り」の働き方を実現するために、企業側はどのようなことを意識するべきなのか。
「サイボウズが目指す働き方は、会社以外に副業をする人にも向けています。独立や起業を志す野心ある人よりも、個人のワークライフバランスを意識して、会社として働き方の選択肢を増やしています。副業や有休などの制度を使うも使わないも従業員次第ですが、一人ひとりが『個人によって働き方に対する価値観が違うこと』を受け入れ、多様な働き方をせざるを得ない状況を作ることが大切だと思います」
多様な働き方を実現するには、何も自ら率先して副業をこなすような自立心を従業員に持たせるのではなく、会社として多様な働き方に応えられるような制度を作ること。個人が望む働き方を否定せずに、受け入れる懐の深さが企業に求められるのだろう。
徹底的に部下と向き合う
今でこそ働き方改革のリーディングカンパニーと呼ばれるようになったサイボウズであるが、ひと昔前は「Up or Out」と呼ばれる成果至上主義を掲げていた。ベンチャー企業として、倍々の成長とスピードを求めるあまり、業績が右肩上がりである一方、離職率が高いことに悩まされていた。
「ひと昔前のサイボウズは業績を上げるために個人を競わせ、チーム力よりも個人の力を重視した結果、チームはバラバラになり、成果を出せない者にはリストラを通達していました。険悪なムードが漂う職場は、離職率を高める原因となり、業績が成長する裏では組織が悲鳴を上げていたのが事実です。
そんな社内状況を変えるために、まず社員一人ひとりと対話し、抱えている悩みや会社に対する想いなどを聞き出しました。その結果、チームで目標を共有し、意見を言いやすい人間関係を構築していくことが、これからの組織に求められると悟ったんです」