路上で画廊に誘う女子に同情して、絵画商法にダマされた20代会社員の大後悔
多少の下心もあり、購入を決意したけれど
高田さんはついカッとなり、「買いますよ」と答えてしまいました。絵の価格は42万円。まずいと思いましたが、隣では声をかけてきた女性が礼を言いながら喜んでいます。そこでふと、彼女の成績に貢献できるならという気持ちが湧いたそうです。
「これで彼女とのつながりができた気でいたんです。連絡先は聞けませんでしたが、この雰囲気なら進展した仲になれると思いました」
しかし、後日調べてみると、絵を販売した業者が問題になっているというニュースを発見。
「いわゆる“エウリアン”と呼ばれる悪質な絵画商法のキャッチセールスを行う業者だったんです。自分が買った絵も数万円の価値しかなかったことを知りました。クーリングオフするため彼女と連絡を取りましたが、『もう申請期間を過ぎてるから無理ですね』と冷たくあしらわれました」
実際に期間は過ぎていて、返金はかないませんでした。ローンはまとめて返すつもりでいましたが、思わぬことで予定が狂うことになってしまいます。
「預金残高を見るのが嫌になったんです。やりたいことがあったのでそのために貯金を始めたところでしたが、それを邪魔される形になったのがすごく悔しくて」
エウリアンによる絵画商法は2000年前後から問題になっていて、何度か裁判にもなっています。2011年に4業者が東京都から行政処分を受けました。繁華街で20〜30代の若者に声をかけることが多く、いまだにやっている業者がいるらしいのです。
ストレスで散財し、雪だるま式に借金が
高田さんは、また、下心で絵を買った自分に対する嫌悪感も湧いたそうです。
「思い出すたびにストレスを感じて、余計な散財までするようになったんです。友人たちと飲み歩いたり、やめていた競馬にも手を出すようになりました」
複数のカードローンで借金をするようになり、借金は100万円近くにまで膨らみます。結局、すべて返済できたのは、絵のローンが終わった3年後。今思い出しても悔しさが残るそうです。
「当時働いていた証券業界に向いていないと思っていて、デザイン関係の仕事を目指して、専門学校に通うお金を貯め始めたところでした。でもあんなことがあって、夢を追いかける自信を失ってしまいました」
WEB系の広告代理店に勤めている現在でも、デザイン職の同僚を見て、複雑な気分になることがあるそうです。思いもよらぬことで生じた借金は、たんに懐事情を厳しくするだけでなく、人生を変えてしまうものになってしまうかもしれません。
― 特集・借金苦に陥る若者たち ―
<TEXT/和泉太郎 イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>