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若手をモヤモヤさせる「ムチャブリ上司」の正体

学び

アルバイト先の髪色基準を気にする女性

 そんなトンデモな労働観は、いつ頃から変化してきたのだろうか。

「SNS文化の影響が大きいのはもちろんですが、最初に若者の意識が変わってきたなと感じたのは、2000年ごろ。当時、私はリクルートで求人誌『フロム・エー』の編集長でした。毎年行っていた調査で、若者のアルバイト探しの基準が、時給や勤務地といった条件重視から、職場の雰囲気重視に変わってきたことに気づいたんです。」

 当時はコギャル、ルーズソックスといった90年代ギャル文化の勢いもまだ残っていた。若い女性から「(アルバイト先の人が)どんな髪の毛の色していますか?」という問い合わせもあったという。

「髪を染める若者が多かったですね。プリクラの登場もあって、ビジュアル重視の傾向も強まっていたため、そこを知りたかったのでしょう。時給より髪の毛重視というのは、当時の気づきとして衝撃的でした。」

年齢は無関係?ズレてる若者も

若手

 20年経っても、オトナ世代と若者の認識の差が埋まらないのはなぜだろうか?

「いま40代の上司も、かつてはその上の世代から無茶な命令をされたり、非合理な状況を受け入れたりしてきた。ネットもSNSもなかった社内に閉じた社会にいて、おまけに転職経験者もほとんどいない。アップデートされていない価値観がそのまま残ってしまったのです」

 ただ、若者同士でも、上下関係によってはこういう事態は発生してしまう。

「あるアパレル店で若くして店長を任されていた女性の話です。彼女が、新人のスタッフに『定期的に店内を見回るよう』伝えていました。その新人は言われたとおり、店内を巡回したのですが、ホントに巡回してきただけでした。店長はそれを見て『お客様が手にとって乱れた服を整えるために、店内を見回ってほしいわけ』と、注意します。

 新人は『目的までちゃんと教えてもらっていない』と反論。それを聞いた店長は『そっか、そこまで説明しないといけないんだ』とあきれながらも、一方で『若手の頃、嫌だったと思っている上司に、まさしく自分がなっている』と、びっくりしたそうです。

 これを老害と呼ぶのは、ちょっと違います。つい気配りというテレパシーを要求してしまいがちな上司と、目的まできちんと語らないと起動しないスタッフのギャップというのは、ある意味、普遍的なんだと思います」

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