井岡一翔4階級制覇の裏で…ボクシング業界と戦った男
日本プロボクシング界は「独裁に近い体制」
さらに山口さんは、日本のプロボクシング界を統括するJBCとJPBA(日本プロボクシング協会)の在り方についても異議を唱えます。JPBAはJBCの関連組織のひとつで、現在はライセンスやランキング、ルールをJBCが、興行をJPBAが担っています。山口さんは「日本のプロボクシング界はJBCとJPBAの独裁に近い体制」と指摘します。
「本当に選手にとっての自由がない。例えば、JBC非公認団体への挑戦もそう。あとはジムの運営にしたってそう。自分は大阪天神ジムをやっているけど、JBCの公認は受けていません。
JBCには『ボクシングジムの会長になるには現役を引退しなくてはいけない』という、理由もよくわからない規定があるから。別にいいやん、と思うんですけどね。一時期、独占禁止法に触れるんではないかと指摘されたこともありましたけど、それほど影響力が大きいんです」
海外のボクシング関係者からも疑問視
一人で活動を続ける山口さんも、そんな日本ボクシング界の洗礼をたびたび受けることに。象徴的な出来事が2016年に起こります。この年山口さんは現役最後となるWBF(南アフリカに拠点を置く認定団体JBC非公認)スーパーバンタム級世界戦のリングに立つことになりました。
この興行は山口さん自身がWBF首脳陣に掛け合い、宣伝を行い、本拠地大阪で実現させた、それまでの集大成ともいえるものでした。しかし、それを快く思わなかったのが日本ボクシング界。映画の中では山口さんが井岡弘樹前会長(50)をはじめとした、当時の西日本ボクシング協会の首脳陣に呼び出され、興行を中止するよう暗に諭される様子が描かれています。
「興行の組まれ方だって、JBCやJPBAの影響力が大きい。映画にもありますけど、開催する前に圧力をかけられたり、試合が終わった後にJBC公認のジムに『他団体の興行に参加したら厳重に処罰する』みたいなファックスが送られていたりね。そもそも自分はJBCとはもう関係ないのにね。
海外ではフリーでやっている人も多いし、そもそもプロモーターの影響力が強い。だから、選手が直接交渉して興行をやったりというのは普通にある。でも日本のボクシング界ではそういった自由はほとんどありません。日本のボクシング界のやり方は、海外標準から見ても遅れています。海外の関係者と話しているとよく言われますよ。日本は何をしているんだかよくわからんと」