「全員つまんねえな」人気漫画家が大学生の葛藤を描く理由
自分を「良く思われたい」と思ってしまう弱さがある
――『働かざる者たち』の中で、主人公の橋田は会社より漫画で自己実現しようとしますよね。橋本先生自身は、自意識の重心は会社と漫画のどちらに置いているんでしょう。
橋本:会社で満たされないところがあるから漫画を描いている、というところがあるんですよね。仕事しているときは「自分は漫画家だ」と思って、漫画を描いてるときは「自分はサラリーマンだ」と思うことで、逃げ道になってる感じですね、ずっと。
――今でもそう思っているんですか?
橋本:そうですね。都合よく、どっちも副業みたいな感じでやっているところがあります。サラリーマンの漫画を描いてるので、会社を辞めても同じように描けるのか、という不安があるんです。今はギリギリのバランスでやれているので、辞める必要もないのかな、と。しりあがり寿先生も、長いこと兼業でやられていたんですよね。
――いざとなったら漫画を本業にできる、という立場ですよね。
橋本:そうですね。でも、もしそうなったら、同僚から良くは思われないですよね。そこに対する後ろめたさがあって……。良く思われたいわけではないんですけど(笑)。
でも最後のところで「良く思われたい」と思ってしまう弱さが自分にはあって。会社の人に嫌われたくないし、なんというか、そこが僕の卑劣なところだと思うんですけど。ギリギリのところで会社にも忠誠があるんです。あんな漫画を出しておきながら、割り切れないというか。
子供が生まれたので育児エッセイ漫画を描きたい
――では今後もサラリーマンを描き続けたい、という感じでしょうか?
橋本:数年前に結婚して最近、子供が生まれたので育児エッセイ漫画を描きたいんです(笑)。子供が本当に可愛いんですよね……。最近は漫画を描いていても、「子供が可愛い」としか考えてないんです(笑)。これ終わったら子供を触りに行けるぞ、っていう感じで。自分の子供の可愛さを世の中に伝えるための漫画を描いてみたいですね。
――最後に、いままさに就活している大学生に対して、アドバイス出来ることがあればお願いします。
橋本:アドバイス……。僕の就職活動はリーマンショックの年だったんですよ。企業も採用を絞ってて。だから片っ端から受けて、受かったところに入れた、という感じなので、アドバイスしにくいですね。
どこに就職しても、好きなことがあれば僕のように夜やればいいと思います。あとは、AIが発達すれば働かなくてよくなるという話もあるから、そこまで粘ればなんとかなるんじゃないですかね……。
<TEXT/真実一郎>
【サレンダー橋本】
会社員、漫画家。1988年、神奈川県生まれ。著書に『恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。』(小学館)、『働かざる者たち』(エブリスタ)がある。週刊SPA!にて連載中の『全員くたばれ!大学生』の第1巻が7月15日発売