オバマ元大統領も登壇。世界一の影響力を持つ「カルチャーイベント」とは?
複合カルチャーイベントは他にあるのか?
SXSWの主柱は今でも「音楽」「映画」「インタラクティブ」だが、現在ではゲームのコンペティションや政治や教育関連のディベートも行われるようになった。
オースティンの街全体がイベント会場と化し、街のいたるところでライブやトークショー、試写会、ワークショップが行われ、ビジネス目的ではない観光客も毎年大勢訪れる。ちなみに、昨年2018年の来場者数は約7万5000人、経済効果は3億5000万ドルだった。
今回の執筆にあたって他のカルチャーイベントについて調べてみたが、ここまで大規模で、しかもジャンルレスなカルチャーイベントは世界広しといえども、他に類がないようだった。
特定ジャンルに限られたイベントなら、映画はフランスのカンヌやイタリアのベネチア映画祭、ゲームショーはロサンゼルスの「E3」、家電見本市はラスベガスの「CES」が有名。音楽ビジネスなら、カンヌで行われる「MIDEM」や英ブライトンビーチの「The Great Escape」が知られている。
来場者数は急増!日本の類似カルチャーイベント
近年、東京でも開催されている「コミコン」は、コミック、アニメ、映画、ゲームとマルチジャンルに対応するが、一般客を喜ばせるのが主な目的でB2B的な意味合いは薄い。
出版営業を担当する知人に聞いてみても、「ニューヨークやサンディエゴのコミコンに行くのは完全に視察目的。商談は別の機会に設けている」という答えが返ってきた。
ただ、11月30日~12月2日の3日間開催された「東京コミコン2018」の来場者数は約6万3000人と過去最多だった。前回の来場者数が約4万2800人を大きく上回る動員となった。また、これらのイベントは限定した会場内で行われる点でも、街ぐるみで行われるSXSWと大きく違ってくる。
そんななか、「SXSWよりサンダンスのほうがクール」という今年1月の「Forbes」の記事が目についた。数年前になるが、MTV.comでも「SXSW vs サンダンス」をテーマに2人の映画評論家が議論を戦わせている。
SXSWが「雪国の映画祭」と比較される理由
ここでサンダンスと呼ばれているのは「サンダンス映画祭」のことで、毎年1月に米ユタ州の雪深い街、パークシティで行われるフェスティバルを指す。映画に特化してはいるが、若手クリエイターを応援・育成し、街全体がフェスティバル会場となる点でSXSWと類似している。
さらに近年は、買い物宅配代行サービスの「Postmates(ポストメイツ)」やマッサージ予約アプリの「REME」などスタートアップ企業が会場周辺でサービスを提供し、「Dropbox」や「Adobe」などがプロモーションのためにスタジオを設けるなど、テックビジネスの映画祭への食い込みも目立ってきている。
ただ、セレブだけでなくオバマ元大統領やバーニー・サンダースなど政治家が登壇してディスカッションを行い、参加者にネットワーク作りの場所を提供するSXSWは、やはり規模・内容ともに他のイベントと一線を画す。
大きくなり過ぎたがゆえに「インディースピリットが薄れてきた」「SXSWではもはや商談を成立させることは不可能」という声も聞こえてくるが、世界最大規模の複合型カルチャーイベントであることは間違いないようだ。
<TEXT/橘 エコ>