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5億円を資金調達した26歳ITベンチャー社長が大切にする「想いの伝え方」

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――ビジョンを共有するためには、自分の思いを仲間に伝える必要があると思います。その際に気をつけるべきことはありますか?

清水:相手に理解してもらったり、納得してもらうときに気をつけていることはありますね。『WHYから始めよ!』(サイモン・シネック)のなかでも述べられていることですが、世界的に有名な哲学者、アリストテレスによると、人を説得するためには3つの要素があるそうです。

1.ロゴス  論理
2.パトス  情熱
3.エトス  信頼

 僕はこの3つを大事にしています。特にイメージが難しいエトスとは「信頼」と訳されていますが、「背景」とも捉えられると思います。「なぜそれを主張しているのか」ということですね。

 たとえば、今ここに介護事業を立ち上げたい人が2人いたとします。その理由を聞いたときに、「自分のお婆ちゃんが、要介護で大変な思いをしている。そんな現状を変えたくて介護サービスを始めたいんです」という人と、「これから老人が増えるから儲かりますよね」という人では、こちらの受ける印象もぜんぜん違います。

 もちろん、企画の提案には熱量を込めなければいけないし、それを実現するための予算はどうするかというロジックもなければいけません。それに加えて、自分がこれを提案している「背景」に説得力がなければいけないと心がけています。

――最後に、いまの20代がこれからの日本を生きていくために、清水さんが必要だと思うことはなんですか?

清水:正直なところ、僕らの世代はわかりやすい“正解”がないです。お金持ちになる、いいクルマに乗る、豪邸に住む、そういうわかりやすい幸せって無いと思うんです。本当に価値観は多様化していると思います。

 物質的にも満たされちゃってますしね。スマホはあるし、食べ物だってそれなりに美味しいものが溢れているし。ハングリー精神や、夢とか意志とか、熱狂とかのない世代だと言われるのも、まあわかる気はします。

 やりたいことがない、好きなものもない、それでも一応、暮らしてはいけます。それなのに先行き不安で息苦しくもある。だからこそ、難しくても自分が熱狂できるものを見つけることが必要だと思っています。

――確かに、自分の将来に漠然とした不安を抱えている若者は多いようですね。

清水:よく「AIに仕事を奪われる」などと言われていますよね。産業革命期にも実際にあった話です。一方で、すでに機械ができる仕事でも、いまだに人もやっている仕事はあると思うんです。たとえば生産地まで拘った布を手で織って服を作るというのは、いまでもビジネスにしている人はいるわけです。

 つまり、なくなる仕事かもしれないから別の仕事をやる的な議論は意味がなくて、自分にとって好きなこと、熱中できるもの、こだわりがあるものなら、それはどんな仕事だろうと未来もあなたがやっていける仕事だと思いますし、価値があることだと思います。

 あまり具体的でなくても、「こういう働き方をしたい」とか、「こういう暮らし方をしたい」とか、それでもいいと思うんです。「朝、起きたくない!」というのも、ある意味、生活様式への熱望ですからね(笑)。

 こんなご時世だからこそ、「これがやりたい!」「これが好き!」「こうなりたい!」といった“意志”を持っている人は際立つし、その自分が本気になれる“意志”をもてたら、突き抜けられるんじゃないかと思いますね。

<取材・文・撮影/江沢洋>

【清水正大】
株式会社ZEALS代表取締役CEO。岡山県倉敷市出身。専門を卒業後、水島コンビナートで航空機のサポートリング開発。東日本大震災を契機に、「日本をぶち上げる」という志に人生を賭けることを決断。2014年4月にZEALSを設立。経済誌「Forbes」の「アジアを代表する30才未満の30人」エンタープライズ・テクノロジー部門に選出される

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